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最初の酒は甘かった
9P
しおりを挟む「あーあ、桜鬼らしくねぇ悪い顔になってるぞ。じゃあ俺も。新八さんには悪いけど、桜鬼との思い出に終止符を打たせてもらう。覚悟しろッ!!」
「臨むところだ原田ぁッ!僕達の本気、鬼の爪を受け止めてみろぉッ!!」
原田がブンッ!と大きく槍を振り下ろすと、一陣の風が起こった。鋭い風だ。その風は鋭すぎて風の刃となって桜鬼へと襲いかかる。
避けない。風の刃をしっかり見て引き付け大きく踏み出すと、ググッと握りしめた拳を振り下ろして風の刃を掻き切ってみせた。
そのまま前傾姿勢で駆ければ、高遠とは違ってまっすぐ正面からは突っ込まない。ジグザグに蛇行。
桜鬼の足はそれほど速くない。1番遅いのが雪、その次に高遠、その次くらい。だからかく乱させるために蛇行したところで見切られるのをわかったうえで、背後に回り込み鉤爪を突き立てる。
空振り。原田も飲んだくれとはいえ新選組の十番隊の隊長だ。思った通り、桜鬼の動きを見切って振り返り避けると同時に槍を突き出す。
その槍を、柄の部分を桜鬼の振り上げられた足が蹴り上げた。桜鬼の自慢の、長い脚。あと、体が柔らかい。
槍が頭の上まで弾かれ、つかんでいる両手も必然的にバンザイ状態。胴ががら空きだ。その一瞬で、桜鬼は蹴り上げた姿勢のまま体をひねってもう片方の鉤爪を振り上げた。
鮮血が舞った、2か所。1か所、桜鬼の鉤爪は狙い通り原田の胸を斬りつけた。
もう1か所。掻き斬られながらもバンザイ状態で素早く槍を持ち替え、桜鬼の軸足を深々と突き刺したのだ。
原田は片手で胸を押さえてよろめき、桜鬼は体勢を崩して倒れそうになるが膝を突くだけに留まる。
暑い。ほんの数秒の間で額に、きつく握りしめる手の中に汗がにじむ。息が上がって、けれど赤い目は原田を映し黄緑色の目は桜鬼を映して外さない。
熱い。傷口から流れ出る血液が、体全体から白い湯気が出そうなくらいに。傷の痛みなんて無視だ、次。次の攻撃に向けて立ち上がり構える。
原田の血をまとった赤い鉤爪、鬼の爪。本気になった桜鬼が振るえば鉤爪がいつもより太く、長くなったような感じがする。
「まだまだこれからだよ、原田。その程度で動けなくなったとか言わないよね?ほら、次いくよッ!」
「全っ然!酒飲んでるよりすげー気分が良くてさぁ、体が、ここが熱く燃えるような感じだなッ!」
ブンッと鉤爪を振って、手元まで流れてくる血を飛ばせば桜鬼は地面を蹴る。今度はまっすぐ、けれど彼の動きに注意しながら突進。
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