344 / 386
暴君と傍観者
8P
しおりを挟む高遠の方が不利なはずなのに、彼はまだまだ強くなっている。斎藤の動きの先を読み、攻撃をかわして反撃に出る。
前に、前に。目もまともに見えずボロボロなのに、恐怖なんて彼からは感じない。
高遠は、自分には倒せないと周りから言われ自分でもそう思っていた斎藤を倒し、早くもっと強い土方に挑みたい。その思いが5割。
あとの5割は、ある人達への約束のため。
「俺様はぁ!この戦いに勝って生き残ったら、ちゃんと実家に帰る……くっ……帰って、あいつらを目一杯抱きしめてやるって約束してんだよぉッ!!」
それは、決別してしまった姉と妹達への約束。
望みが薄いのは最初からわかっている。だからこそ、守ると決めた約束のためにあがく。ここで死ぬわけにはいかない、死にたくない。
今までは尊敬する、し過ぎている夜鷹や黒鷹のためだった。だがあの時、屋敷の牢に姉と妹が来た時から高遠の考えは変わった。
組織として、長を尊敬し守るのは当たり前のことだろう。けれど組織の長よりも、もっと大切に思い命がけで守りたいもがあることに気が付いた。
何よりも愛する、守りたいもののために戦う。それが今の高遠の意地。
「はぁぁあぁぁ……今さらなんだよ、何もかも。今さらどんなにあがいたって、俺があんたを殺すことは変わらない。面倒だから、はぁ、早く死んで」
「俺様がてめぇを殺すか、てめぇが俺様に殺されるか、2つに1つだ!終わらせるぜぇッ!!」
「どっちも同じ意味だよッ!あーもう、やっぱりあんたは馬鹿だなッ!面倒くさいッ!!」
高遠も斎藤も、どんどん攻撃が激しくなってきている。もう避けることはしない。どちらも攻撃のみで、斎藤が刀を振るうたびに高遠の体から血しぶきが噴き出る。
高遠の刀も確実に斎藤を斬りつけてはいるが、意識がもうろうとしている高遠よりも斎藤の方が速いのだ。
そりゃあもうダントツで。だって斎藤一は新選組の三番隊の隊長で、剣の腕は一位二位を争うほどの剣豪だものな。
イライラが頂点に達し完全に本気になった斎藤は、けれど冷静で。その身に受ける攻撃は最小限にとどめ、かつ自ら繰り出す斬撃は的確。
高遠が突き出した刀を受け止めると滑らせるように払い、大きく1歩踏み出して首を、左目を狙う。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる