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暴君と傍観者
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しおりを挟む「だっさ……」
「うるっせぇっ!くっそがぁぁぁぁッ!!」
言わずもがな。斎藤と高遠。
「戦う気がないなら俺帰る。じゃあね、マヌケな暴れ馬」
「待て、待て待て待て待てぇっ!?勝負はまだ始まってもねぇってのに、逃げるのかよ?戦わずして負け犬だなぁ!」
「………………あぁもう、面倒くさい。はぁぁ。うるさくてたまらないから、生き埋めにしてやる」
性格がまるで正反対の2人が今、どこで何をしているのか?場所は、雪と沖田が戦っている庭の真裏にあたる2番目に広い庭。
黒鷹に命じられて、高遠は斎藤の相手をすることを受け入れた。かなり不服そうだったが。
それもそうだろう。高遠は自分より強い者との戦いを望んだ。しかし新選組の頭の近藤の相手は尊敬する黒鷹に譲るにしろ、副長である土方の相手は自分だと思い込んでいた高遠。
土方の相手もまた、その人以外有り得ないというくらい相応しい者が選ばれていた。
あとは鳶と山崎、雪と沖田のように因縁のある者や思い入れのある者が組まされ、高遠には残った新選組の中で力量的に考えて斎藤が当てられた。
斎藤だって沖田、永倉、斎藤と争うほどの剣豪だ。任務でも本気で戦ったことなどほとんどない彼の相手が、果たして暴れ馬の高遠に務まるのか?
捨て駒というわけではない。職務怠慢で戦闘意欲もない斎藤を本気にさせれば、高遠は彼に滅多打ちにされるだろう。
なにせ高遠は戦いたい。やる気がなく今すぐ帰りたい斎藤にしつこく食らいつき、どうやってでも必ず腰の刀を抜かせる。
そうして斎藤が本気になったら圧倒的な力で叩きのめされ絶望の淵に立たされる。だって斎藤は本当に強い。
そして、高遠は喜ぶ。死の間際まで追い込まれれば追い込まれるほど彼はやる気に満ちる。意地でも倒したいと強く願う。
そして、どんどん強くなる。斎藤に順応していく。桜鬼と、鳶と手合わせした時のように。相手に慣れて急速に成長する。それが高遠。
さて。そんな高遠が今どうなっているのかだが。一言で言えば、穴にハマってギャンギャン吠えまくっている。
ずいぶん前に作った雪お手製の、愛情のこもっているかもしれない落とし穴。高遠の身長よりも深い穴から手を伸ばせば手の平くらいしか出ない。
よりによって高遠がハマってしまうとは。この場所に来たのにも意味はある。斎藤が逃げようとしたのだ。
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