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イヌとサル
9P
しおりを挟む「んっ!ぐ、ぎぎぎっ……く、うっ……せりゃあぁっ!!」
迫りくる刃を、素手でつかんだ。今度は引き抜かれまいとグッと握りしめ、もう片方の手で思いっきり沖田の頬をブン殴る。
武士として、刀から手を離すわけにもいかないので避けることもできずモロに食らった。
沖田の頭はちゃんとあるか?大地を震わせ地面を粉砕させる拳だ。首がぶっ飛んでもおかしくはない。
「っ!!…………うぅーー……ケホッケホッ!もう、一瞬だけ意識が飛んだよー。よくも僕の綺麗な顔に傷をつけてくれたね?」
「自分で綺麗な顔とか気色悪いわ、ドアホウ。もう一発、反対側に食らえっ!」
「残念だけど、2度も同じ手は食らわないよ。もう終わりにしようね、雪りん」
あぁよかった、それとも残念?沖田の首はつながっていた。それでも今のはかなり効いたはずだ。ダランとうつむいた頭、鼻血は出ているし咳き込むと血を吐いていた。
雪が拳を振り上げた瞬間に意識を取り戻した沖田の紫色の瞳がギラリと光り、目を閉じ開いた時には彼女の小柄な体が沖田に組み敷かれていた。
相手が人間離れした超怪力の雪でも、沖田は男だ。コツをつかみ隙を見つければ、彼女に力で勝つことができると沖田は考えていた。
結果。大振りな攻撃の前に大きな隙ができるのを見逃さず、一気に攻めた。
雪は足が弱い。笑顔をかなぐり捨てた沖田は雪の足を払い蹴り、つかまれている刀を力づくで押し込む。
軸足を崩された雪は体勢を崩し、なすすべもなく押し倒される。けれど彼女にも意地がある。つかんだ刀は決して離さず、心臓を狙って押し込まれた刀の切っ先を反らせた。
「まだやる?こうなっちゃたらもう無理だよ、諦めて縛について。今ならまだ、命を奪わずにいられるから」
反らせた刀は、雪の筋肉隆々な腹部を貫通。地面に深く突き刺さって抜けない。このまま沖田が刀を横に薙げば、彼女は簡単にこの世を去ってしまう。
ググッと顔を近づけ哀れみの目を向ける沖田の頬に、雪は唾を吐いた。唾どころか、込み上がってきた血の塊ごと吐いた。
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