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イヌとサル
7P
しおりを挟む目を閉じた。迫りくる拳の風圧を感じる。次の瞬間、すぐ耳元で地面が砕ける音がした。激しい地揺れに脳が揺れた、耳元で響く爆発音に鼓膜が壊れるかと思った。
でも、他に痛みはない。生きている。
代わりに「うっ」と苦しそうに息を詰まらせる雪の声が聞こえ、何かがドサッと落ちた。目を開けると、隣で彼女が荒い息を吐きながら倒れていた。
抱きしめるように右腕を押さえ、体を縮めて呻いている。額に玉のような汗がいくつも浮かび、けれど沖田と目が合うと茶色い目はギンッと鋭さが増す。
右腕を押さえながらモゾモゾと下がり、苦しみながら起き上がる。沖田も足を何とか地割れから外して起き上がった。
「なるほど。うっ……特別な力にはそれ相応の見返りがあるってわけだねー。その力、あとどのくらい使えるんだろうねぇー?」
「うっさいわ、はぁっはぁっ、はぁっ……この腕が壊れても、足が壊れても、あんただけは絶対に……倒すんや……」
人間離れしすぎた力。当然、人間の体にはかなりの負荷がかかる。たった一撃で骨はヒビが入り、筋肉はかなり損傷してしまうのだろう。
負荷の激痛、そして沖田に斬られたところの激痛に耐えながらもなお拳を構える。まだまだ、これからだ。まだまだ雪の怒りは治まらない。
今度は沖田から。正真正銘、本気の全力でかかる。これが最後だから。雪の本気の心を感じ、自分も今くらいは本気になってみようと思ったから。
だから沖田はやっぱり口元に笑みを浮かべながら、でも紫色の瞳は鋭さと真剣さが増して。
刀を振り上げる。刀を振り下ろす。刀を突く。雪の攻撃を受け止める。もう立っているのも苦しいはずなのに。休む間もなく次々と繰り出される雪の攻撃を全て見切って、けれどだんだん重くなって。
「く、うっ!この、怪力女が…………やば、骨いったかも。あ、ねぇ。僕さぁ、雪りんがどうしてそんなに僕を目の敵にしてるのか本当にわかんないんだけど。昔過ぎて忘れちゃった」
雪の予想外に軽い身のこなしで跳び回し蹴りが炸裂、沖田の左腕に直撃して骨が折れる音がした。同時に、蹴った足が骨に達するほど深く斬りつけられた。
しかし沖田、なぜ今そんなことを言う?やっと鎮火して戦いに集中してきたというのに、雪のこめかみのあたりで「ブチンッ」って嫌な音が聞こえたぞ。
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