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イヌとサル
5P
しおりを挟む瞬きもしないでどれくらいの時間が過ぎたのか。沖田のこめかみを汗、ではなく血が流れると2人が同時に腰を落とし地を蹴った。
雪の拳は届かない。だから沖田は真正面から彼女の腕を斬り落とそうと刀を振り下ろす。
刀身に魂が宿っているのかの如くまっすぐな太刀筋は、彼の本当はまっすぐで純粋な心を表している。が、その刀は雪の腕を斬ることはできなかった。
「ぐあっ!?」
沖田の体が吹き飛んだ。地面を転がり、途中で地面に刀を突き刺して無理矢理止まるとフラフラ立ち上がる。
そこへすかさず雪の回し蹴り。上半身を反らして避けた、はずだった。なのにまたもや、沖田の腹部に激痛が走る。鉄の味が口に広がり、たまらず吐いた。
「な、にを……した……?ゴホッ!」
雪の腕は、足は沖田には当たっていない。かなり距離があった。けれど攻撃は効いている。沖田は何が起こったのかまだわかっていない。
ジリジリと、刀を向けながら痛む腹を押さえて後ずさる。血で濡れた赤い唇を手の甲で拭い、荒い呼吸を整える。
笑った。その言葉を待ってましたとばかりに、雪は大層嬉しそうに右の拳をブンッ!と突き出す。すると風が沖田のすぐ横をビュウッ!と駆け抜けた。
「あんたらの刀をまともに相手にしとったら俺っちの不利やいうんはわかっとる。せやから対策を考えたんや。当たらへんねやったら、当たるようになるまで強くなりゃあえぇんやってな」
雪と沖田は出会った頃からの因縁がある。一方的に雪が恨んでいるのだが、2人は何度も戦った。そして、間合いの関係から雪が沖田に勝つことはなかった。
どうすれば勝てるのか、攻撃が当たるのか考えた。仲間達にも相談した。桜鬼に言われて武器を変えることも考えたが、刀は上手く使いこなせない。
鳶に言われて、素早く間合いに滑り込めるように速さを磨いた。しかし前よりは早く動けるようになっただけで、沖田よりも素早くは動けない。
猫丸は首を横に振るし、黒鷹は「雪が思うようにすればいいよ」と適当なことを抜かす。仕方なく最後に尋ねたのが、高遠。
彼は面倒くさそうに「あぁ?んなの、もっともっと強くなって気合いでブン殴りゃあいいだろうが。そしたらもう怪力じゃなくて豪力だな」と言い、面白そうに笑った。
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