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イヌとサル
1P
しおりを挟む時間をさかのぼって、鳶と山崎が森の方へ姿を消した頃。
庭では2人が飛び出したのを合図にそれぞれ自分の相手と戦い始めていた。が、広い庭とはいえ残りの13人が一斉に戦うには無理がある。
よって、鳶と山崎同様に場所を変えたのが11人。庭に残って睨み合っているのは2人。雪と沖田だ。
というか2人がその場を動こうとしなかったから、他の者達が仕方なく、戦いに巻き込まれないように場所を譲ったようなものだな。
なにせ雪は超怪力。拳ひとつで地震を起こせるのだ、近くで命がけの戦いなんてできまい。
「やっぱり最後は因縁の対決だよねー。作戦を考えた土方さんの指示で、僕達はそれぞれ倒す相手を決めていたんだけどー……そっちも同じみたいだねぇ。もしかして雪りん、率先して僕を選んでくれたのー?」
「あんたを倒すんはこの俺っちや!他の人に取られとうないさかい志願したんや、今までの恨みつらみ全部ぶつけたるさかい覚悟せぇっ!」
「恨み?あっれー、僕、雪りんに何かしたかなー?あはははっ!まぁいいや、どうせ勝つのは僕なんだし、最後くらい楽しく殺し合おうねー?」
「なぁっ!?あんた、あの時のこと忘れてしもたなんて言わさへんでぇ!?」
楽しそうにニコニコしている沖田は刀も抜かず、雪の目の前をあっちへこっちへウロウロせわしない。
ニコニコというかニヤニヤ、しっかり雪を紫色の瞳に捕らえたまま様子をうかがっているようだ。
雪がゆいいつ沖田を毛嫌いしているのはやはり彼に何かされた過去があるからか。ニヤリと笑う彼は「覚えてないなぁー?」としらを切る。
確信犯だ、こいつ。あーあ、キレてうるさいのは高遠くらいだったはずなのに。今では山崎も雪も土方も同じようなものだな。
「キィーッ!!もう堪忍ならんわ、どりゃーっ!!」
「うわー、すごい迫力。でも、間合いは僕の方が断然有利なんだから、残念だけど雪りんが僕に勝つことはないよ。だって僕、ぜぇーんぶ見切っちゃうからねー」
まるでサルのように叫んで地団駄を踏む雪。ただの地団駄で小さな地震が生まれる。が、感情に任せて繰り出された拳は空振り。
半歩下がっただけで避けてみせた沖田は刀に手をかけ、グッと腰を落とす。
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