鷹の翼

那月

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新選組

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 まず最初に、山崎と鳶が姿を消した。ずっと“待て”状態だった山崎がやっぱり真っ先に鳶をめがけて襲いかかり、ヤレヤレといった顔で鳶は迎え撃つ。

 忍同士の戦いだ。屋敷内では狭いと判断したのか、鳶は彼を近くの森に向けて思いっきり蹴り飛ばした。そして追いかける。

 食らいはしたが山崎だって忍なので、しっかり受け身を取って高い大きな木に着地。飛んでくる鳶めがけてクナイを投げつける。

 ただのクナイではない、ジジジジッと小型の爆弾付きのクナイ。容赦なく、いくつもポイポイ投げつける。

 一瞬、全てが命中したように見えた。避けようとした鳶の右肩にクナイが刺さり爆発。他のも一気に爆発して煙で見えないが、山崎はバッ!と背後を振り返った。

 音もなく、すぐ目の前にまで鳶が迫ってきていた。ついさっきまで鳶がいた煙の中からは変わり身で使った黒焦げの木が落下。

 この程度で鳶が負傷するなんて微塵も思っていない。だからこそすぐに振り返りながら小太刀を構え、無表情の奥に静かな炎を燃やす鳶を迎え撃つ。

「!?」

 ガキィンッ!と、小太刀とクナイが噛み合った。火花が飛び散り、そしてフッと力が抜ける。目の前で鳶を睨みつけていた山崎が、ニヤリと笑った。

 途端に山崎の姿がかすみのようにかき消え、真下から彼の声が聞こえた。

「俺様だって変わり身くらい使えるんすよ!おらぁぁッ!!」

 鳶が立っている木に、いつの間にやったのか大きな切り込み。山崎が気合いと共に思い切り蹴りつけるとミシミシッ!と音を立てて木が倒れる。

 別の木に飛び移ろうとする鳶に、そうはさせるかと地上から山崎が手裏剣を投げつける。たまに地面に転がっている拳くらいの石も投げつけているな。手当たり次第、か。

 が、やはり天才忍者か。鳶は空中で、襲いかかってくる手裏剣や石を捕らえ完璧に避けクナイで弾く。

 天才忍者の鳶にとって山崎は相手にもならない、か?何も感じ取れない無表情、いつもの顔。しかし目だけは違う。無の奥に、青く燃える炎が揺らめいている。

 鳶にとって山崎は確かに弱いかもしれない。けれど、誰よりも鳶への対抗意識は強い。恋は盲目というが、山崎の場合はその恋が鳶だということだ。

 1度でいいから、とは言わないだろう。鳶に勝つために生きてきたといっても過言ではない山崎。今こそその力を見せつけ想いをぶつける時だ。

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