鷹の翼

那月

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零落

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 ――時、同じくして。鷹の翼の庭では決戦を前に高ぶっている高遠が鳶と手合わせをしていた。

「うっらぁぁぁっ!!逃げるな!受け流すな!避けるな!この野郎っ!!」

「おーい高遠、今何時や思うてるんや?もっと声を抑えて叫びぃ?それに、『逃げるな受け流すな避けるな』はおかしいやろ、あははっ」

 今が何時かって?夜中と言われる時間帯の少し手前ぐらいだな。そのバカ丸出しの叫び声を何とかしないと高遠、黒鷹にしばかれるぞ。

 長い間ずっと手合わせをしている。たぶん、2刻と半くらいはやっているんじゃないだろうか?

 お互いに怪我をさせないように努めているが、攻撃が荒い高遠は勢い余って自分の攻撃で転倒し怪我をしている始末。やっぱりバがつく残念な人だ。

 対する鳶は逃げると避けるが中心。高遠は一撃一撃が全力で大振り、攻撃後は必ずと言っていいほど隙が生まれるが鳶は狙って攻撃しない。

 というのも、眠いのだ。眠くて眠くて、少しでも油断すればそのまま目を閉じて意識を手放してしまいそうなくらい。

 つまり高遠の相手をしている場合ではない。なのに、それをわかっているはずの雪に背中を押されて手合わせを続けている。

 雪としては決戦最中に睡魔に襲われて眠ってしまわないよう、少しでも睡魔に抗う力をつけてもらいたい。そのために手合わせをさせているんだろうが。

 そんな雪の想いを感じ取っているから、鳶はそれにこたえようと睡魔と高遠と戦う。

「高遠さん、だいぶ追いついてきたにゃー。順応。あ、雪さん、昨日子猫が生まれたんだにゃー。裏山にいるから、気を付けてにゃー?」

「子猫!?可愛いんやろうなぁ。見たいけど、母猫に怒られそうやから我慢我慢。けど、名前つけさせてな!」

「いいよ。母猫も子猫も野生に帰しちゃったから、ちょっと寂しいのにゃー……」

 高遠と鳶が手合わせしているのを、雪と猫丸は縁側で眺めていた。猫丸は使役している猫達全員を連れて1匹1匹膝に乗せて対話、ケガや病気がないかを念入りに確かめている。

 数十匹はいる猫達。全ての猫の区別ができる猫丸にとってこの猫達もまた大事な家族。夜鷹に拾われるよりも前から一緒にいたから。

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