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零落
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しおりを挟むもちろん、鷹の翼の仲間達は見たことがある。たまに町で食事をする時は口に運ぶ時だけ布を下げ、咀嚼の時には口元を覆ってしまう。町人で見たことがあるのはわずか。
山崎、鳶を倒したいという思いも相当強いと思うが。素顔を見たいという思いもかなり強いだろう。実はこっちが本音だったりして。
楽しみにしていた。鷹の翼を完全に捕縛する、殺すつもりで戦う時がもう目の前にまで迫ってきている。
少し寂しい気もするが、本気で鳶とぶつかり合えると心を躍らせ野心をたぎらせていたのに。決戦の参加は隊長達だけだと聞いてがっかり。
だからって、行き場のないイライラを斎藤に向けるな。布団にくるまっているとはいえ、だんだん蹴りが強くなってきて斎藤が呻き始めているのに気づいていないのか?
「すすむーは忍部隊の隊長でしょ?天才忍者の鳶の相手に誰がふさわしいかって考えたら、すすむー以外有り得ないんじゃない?」
「土方さんから聞いた話では山崎君の名も挙がっていたゆえ、安心するがよい。が、はしゃぎすぎるなよ?」
途端に、山崎の顔がパァッと明るくなった。わかりやすい。
沖田まで寝転がったままミノムシ斎藤をツンツンし始めた。それを注意しようともせず苦笑を浮かべる松原は、着物の上半身を脱いで汗をぬぐう。
永倉に負けず劣らずの筋肉。薙刀をよく使うとはいえ、素手で戦えば雪をも負かしてしまう。
松原が言っていたように、土方はすでに鷹の翼と新選組の最終決戦がどうなるのかを予想している。
今までのはただの戯れ、お遊びだった。次、お上からの命令で新選組が襲撃するのが最初で最後の、本気の戦い。最終決戦。
鷹の翼は1人1人が強い。色んな意味で強い。力や技は天下の新選組様には劣るかもしれない。けれど心は、皆の中心にいた夜鷹の心を受け継ぐ者達の心は強い。
誰にも負けない、譲ることの出来ない強い想いがある。熱い炎を胸にたぎらせる。皆、それぞれの正義のために戦う。
死ぬかもしれない。覚悟の上だ。手加減なんかしない。全力を出しきって、本気でぶつかって、それで命を落としてしまえば本望。その時は現実を受け入れる。
「皆、命と使命と正義をかけて臨むのだ」
松原が静かに言った。新選組だってそうだ。たとえ鷹の翼が義賊で町人達から慕われているとしても、新選組からすれば悪党。
ましてや城の主に手をかけた者達だ。悪党を召し取るのが正義の新選組の務め。
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