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零落
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しおりを挟む山崎だって決して弱くはない、どちらかといえば強い方だ。この前は凶暴な山猫と化した猫丸に負けていたが。かなりしっかり落ち込んでいた。
血のにじむ、血を吐くほどの努力を積み重ねてきた。この性格だ、戦闘に向かない性格は落ちこぼれだと罵られた過去がある。
戦闘に向かないのならと、変装の腕を磨いた。老若男女、関節を外して子供に変装することもできる。バレたことは1度か2度くらい。
完全にその人になりきる。どんな人にも、どんな職業にも。その人の設定を徹底的に頭に叩き込んで身も心もその人になりきる。
山崎が和鷹に変装して黒鷹に近づいたのが記憶に新しい。あんな風に、自尊心や自分そのものの心を捨ててまでしてなりきる。この前は、相手が悪かった。
以前、町で雪と団子を食べていた鳶に町娘に扮した山崎が接触を図ったことがある。
この時は気づかれなかった。隣に座っても、話しかけても全然。とはいえ鳶なので口数はとても少なかったが普通に町娘だと思い込んでいただろう。
しかし新選組が鷹の翼の屋敷に襲撃に行ったある日、山崎は沖田に扮して鳶と雪を襲撃。鳶にはバレなかった。
が、何かと沖田に因縁がある雪に気付かれたのだ。いつもの沖田と違って「イライラせぇへん」かったらしく、要はウザさ加減で見抜かれた。
変装名人の山崎がなりきれないほど、沖田はウザいのか。
「……決戦前に、こんなに疲れていいんですか?はぁ。俺は決戦、行きませんけど。はぁぁぁ……そんな目で見られても嫌ですから、絶対に行きませんから」
完全なミノムシになった斎藤が溜め息交じりにめんどくさそうにそう呟き、モゾモゾ。動きまで完全にミノムシ。
「そう言うな斎藤君。土方さんの考えでは、鷹の翼の人達1人ずつに私達隊長が1人つくようになっている。無論、斎藤君も頭数に入っている故覚悟しておけ」
「…………はぁぁぁぁ……うっ」
まるで呪詛。松原の優しいお叱りに、とんでもなく嫌そうな顔で深く長い溜め息を吐いた斎藤。声が、ブレた。
って、まだイライラしているのか?山崎がゴスッゴスッとミノムシ斎藤を両足で蹴りまくっている。
「チッ、隊長達だけかよ。せっかく鳶との決着をつけてやろうと思っていたのに。クソッ、無駄に長ぇ手足をふん縛って素顔を拝んでやろうと思っていたのによ!」
団子を食っていた時に見なかったのか?鳶は食事の時以外、いつも口元を布で隠しているので素顔に興味がある者は少なくはない。
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