300 / 386
一夜限りの
7P
しおりを挟む「いつもこの店の枝豆を全部食ってるよ?常連になってからはわざわざ、俺のためにたくさん仕入れてくれるからね。わ、指がシオシオになってる」
枝豆は桜鬼の好物。とんでもない速さで山盛りの枝豆が空になって隣に殻の山を作っている。
食べ終わった後の枝豆の殻は半分ほどのかさになって山を築いているが。その殻の山が12個。さっき来た分を合わせて14かごか。畑一面は余裕だな。
長時間大量の、枝豆をほぼ止まることなく食べ続けている。だから味付けに使われている塩のせいで指先がシオシオ、もう塩味が染みついているんじゃないか?
これくらいの量を食べるのはよくあること、というか毎度のことなので。この店の店主は桜鬼がいつ来てもいいようにと、日持ちする枝豆を大量に仕入れているんだとか。
いつもいくつの枝豆を食べているのか、この3人と松原が加わった4人で数えてみたことがある。結果、千を超えたあたりでやめてしまった。知らなくてもいいことも世の中にはあると。
「んくっ……桜鬼さぁ、それ食ったら帰るのかぁ?ならぁ、もう少しぃゆーっくり食って行けよぉ」
もう熱燗を半分以上飲んだらしい、目がトロンとしてきた原田が枝豆のかごを指先で引っ張った。
盃を片手に、机に溶けるようにデローンと伏せて上目遣い。寂しそうな、夕方の空のような紫色の瞳に桜鬼の驚いた顔が映る。
赤く染まった頬、潤んだ瞳、そして上目遣い。からの寂しそうな表情と声。桜鬼の手が、止まった。
「…………わ、あ……びっくりした。あんたが可愛い女の子だったら襲ってたかもだよ、危ない危ない。あー、びっくりしたなぁもう、本当に……いてっ」
酔っているからとはいえそんなことを言われるとは思わなくて。それに、酔いのせいで出た言葉ではなくちゃんとした原田左之助の本心の言葉に聞こえたから。
動揺のあまり、桜鬼は手に持っていた枝豆をかじろうとして誤って指を噛んでしまった。
飲んだくれの隊長は、笑わない。ジッと、彼を見つめるばかり。永倉もそんな原田の様子に驚いていたがやがて「そうだな、最後くらいはゆっくりしようぜ」と唇を酒で濡らす。
そう、きっとこれが“最後”になる。酒を酌み交わすこの時間だけは、3人にとっては特別だから。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる