鷹の翼

二度目の逢瀬

５P

「私は魅堂小紅。近藤局長の娘である紅花はもういないのです。それに、あの方ならばあなたよりも容赦なく私に縄をかけるでしょう」

　普段温厚な近藤は、あぁ見えて命令には忠実。私情を挟まず、土方よりも融通が利かない。

　小紅が言うように、親子として話をするよりも早く彼女――魅堂小紅を捕らえる。それは彼女が“小紅”を選んだ時に近藤が決意したことだ。

　小紅のため、近藤のためと土方が気を遣うことはない。振り返り、深々と頭を下げた小紅は「ありがとうございます」とそのまま、姿を消した。

　忍もビックリの去り方。実は鳶に教えてもらったんだとか。

「また……いや。じゃあな、俺の――」

「ん？まだ起きておったのかトシ。今戻った。その座布団、もしや誰かと…………あぁ、あの子か。わしの気配を感じて逃げたのだろう。トシ、昼になったら招集をかけなさい」

　入れ替わり、大層疲れた様子の近藤が姿を現す。部屋を見渡して肩の力を抜くと、悲しそうに微笑む。

　土方の頭にポンと手を置いた近藤は「昼まで寝る」と言い残して立ち去る。それまで休んでおけと、手拭いを持たせて。

　土方は、肩を震わせた。