鷹の翼

那月

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二度目の逢瀬

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「土方様……?」

 驚きというよりも戸惑いを隠せない小紅の声にハッと我に返った土方は慌てて体を離し、咳ばらいを1つ。

 スッと手を伸ばし、小紅の頭を撫でようと持ち上げる。触れずに、引っ込められた。

 覚悟を決めた小紅の前には、同じく覚悟を決めた土方。彼は彼なりに、小紅との間に線を引いた。お互いにもうその線を越えることはない。

 というより、あまり小紅に触れていると。どんなに離れていても黒鷹が気づいて、般若の顔でやってきて刀を抜くだろう。その姿を容易に想像できた土方。

「新選組は、たとえ相手が女子供でも悪人ならば容赦はしねぇ。もし俺とお前が刀をぶつけることになっても俺は、必ずお前を斬る」

「臨むところです。ところで……突然の呼び出しに素直に応じてはみましたが、私はこのまま何事もなく帰らせていただけるのでしょうか?悪人らしく逃げますか?」

「そういう所は変わらねぇな。今はお前達鷹の翼への命令は“見張り”以外にはない。捕らえるつもりはねぇよ。今は、な」

 政府の狗は命令がなければ動けない。勝手な行動は身を亡ぼす。

 お上に呼ばれた近藤がいないから土方は小紅を呼んだ。お上からの命令を預かった近藤が帰ってくるまでに小紅を鷹の翼に帰すと決めていたから。

 近藤が帰ってくれば小紅はお上からの命令により直ちに捕まえられてしまう。近藤が先か、小紅が戻るのが先か。

 それは土方にもよくわかっている。近藤が帰ってくる時間はわからない。これは土方の勝手な賭けだ。

 勝手な、個人的な願い。近藤の帰りが遅くなればいい、と。

「近藤さん、お前の親父には会わなくていいのか?親子としてなら少しくれぇは、話はさせてくれるだろ。近藤さんも話したいだろうし」

 土方がおかしなことを言った。そんなことをすれば小紅は捕まる。土方は彼女に捕まってほしくないと思っていたはずだ。

 ただ単に親子の間を取り持とうとしているのか?血のつながりはなくとも確かに親子の絆があった、けれど裏切り裏切られた親子。

 きっと、次に会う時は敵だから。親子としての最後の言葉を交わすことなどできないだろうから。

 それなら今、こうして敵同士である小紅と土方が話をしているように、近藤も最後の親子として言葉を交わせればとそう思っているのかもしれない。

 しかし、小紅は首を横に振り立ち上がった。

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