鷹の翼

那月

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二度目の逢瀬

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 そんな小紅の性格を熟知しているからこそ土方は、大きく息を吸って深い深い溜め息を吐く。胃が痛むのか、押さえた。

「鷹の翼は滅ぶ。お前も死ぬぞ」

 静かに告げたその言葉は、ほんのわずかに小紅の肩を震わせた。さっきのように「わかっています」と反論しようとして、開いた口からは音も空気も出ない。

 本気で逃げれば命は助かるだろう。元々悪人の集まりなわけなんだし、また新しい土地で暮らせばいい。

 けれどそんなこと、黒鷹は望まない。彼だけでなく他の皆も、小紅も望まない。魅堂黒鷹率いる鷹の翼は、その名に恥じぬ最期を迎える。

 でも、それでも本当は、心のどこかで今すぐ黒鷹と一緒に逃げ出してしまいたいと思っている。

 だって小紅は黒鷹を愛する妻なのだから。やっとつかんだ幸せを手放したくはない。諦めきれないから、口を閉ざしてうつむいてしまう。

「……なんて、お前に言っても無駄だってこたぁわかってんだよ。ずいぶん変わっちまったもんな、お前」

「なんだか今日の土方様はいつもの土方様らしくありませんね。よほど、お疲れのご様子」

「おい、そりゃあどういう意味だ。まぁ疲れているけどな。お前の変化くれぇ、周りからカタブツだの面白くねぇだの何だの言われる俺でもわかるんだよ。お前が今、どれくらい幸せなのかってな」

 意外だった。まさか土方の口から「幸せ」だなんて言葉が聞けるとは。あまりにも意外過ぎて、小紅はポカンとマヌケ面。

 露骨に驚いてしまった元部下に、土方のシワがさらに深くなる。般若顔か。

「申し訳ありません。どうしてもわからないのです。なぜ、そこまで裏切り者の私を気にかけるのですか?養子とはいえ、近藤局長の娘だからですか?」

 この場で土方の命を奪おうとしてもおかしくない小紅を、なぜ彼はここまで心配するのか?優しい声をかけるのか?

 その問いかけに彼は、すぐに答えた。ただ一言「お前の都合のいいように考えろ」と。その考えこそが真実なのだと、告げて微笑む。

 穏やかな微笑みを、小紅は初めて見たのかもしれない。死ぬだの殺されるだの話しているのに、こんなにも穏やかで嬉しそうな微笑みを見せるのか。

 小紅の問いに対する答えにははっきりなっていないが、彼の考えを探ろうと深く考えてみた。

 近藤の娘だから、元新選組の土方の小姓だったから以外で、何か。こっちでの暮らしを思い出そうと細い顎に手を当てて考え込む。

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