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三上黒鴇
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しおりを挟む待て待て。まず、どうやって入って来れた?ゆいいつの出入り口には小紅がいて中からは入って来れないのに。ということはやっぱり外から?
けれどここは城内。外壁を、しかも盲目の女が登って来れるとは到底思えない。と、外から雪の声がした。
あぁ、もしかして雪に押し込んでもらったか?投げ飛ばして、はないだろう。それか雪の指示を聞いて自力で登ってきたか。
雪ならば人を1人くらい背中に負ぶったまま外壁を登るなんて、不可能なことではない。聞こえてくる雪の声は、そんなに遠くではないのだから。
見れば沙雪の着物は汚れていてボロボロ、手足は細かな擦り傷があって指先は血だらけ。2人の戦闘で雪の声が掻き消されていたか。
「白鴇様のためならどんな場所にだって、どんな手段を使ってでも必ず、辿りついてみせるの。白鴇様だから、怖くてもできるの」
白鴇の言葉に、向けられる本物の殺意にビクッと体を震わせる。しかし彼女は声のした方に近づく。
「今の白鴇様は怖い、恐ろしい。でも、それ以上にそばにいたいの。この目を抉られた時には死を覚悟したけど、それでもあなたのことを愛しているから。苦しんでいるあなたを放ってはおけないわ」
1歩1歩、沙雪は白鷹との距離を縮めていく。あと1歩で手が届く。ダメだ。白鴇の刀が沙雪の方を向いてしまう。
「じゃあ今度こそ、殺してあげる」
「させない!!まさか沙雪ちゃんにまで手をかけるなんて。見損なったよ、白。ここまでお前のことを想ってくれるなんて、幸せなことだと思わないのか?」
自分から沙雪に向けられる刀を蹴り上げた黒鷹は、沙雪を背後に庇い白鴇に刀を向ける。
巻き込まれる。すかさず駆け付けた小紅が彼女の手を引いて部屋の隅へ。いきなり現れた小紅に驚いたが、名前を聞くと「会いたかった」と少し安堵。
黒鷹の妻である小紅と白鴇の妻である沙雪が見守り、黒鷹と白鴇は再び対峙する。
「白が僕に固執するのは、白を理解しているのが僕だけだから。でも本当は違うんだよ。お前に酷い目に遭わされてもこうやって止めに来てくれるほど、沙雪ちゃんは理解しているし愛している。受け入れなよ、白」
沙雪は小紅と同じだ。
どんなに傷つけられ遠ざけられても、心から愛しているから諦めずに前に進める。何度でも、愛する者の手を握るために、ギュッと抱きしめるために。
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