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三上黒鴇
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しおりを挟む跳び下がろうとしたところで今度は白鴇の刀が喉めがけて下から迫ってくる。振り向きながら、見もせずに勘だけで攻撃しているのか。
いや、勘じゃない。見えなくても感じている。音で、風で、匂いで。目が不自由な分、他の感覚を研ぎ澄ませて反応しているのだ。
この時のために、白鴇は訓練してきた。自分を捨てた兄を、屈服させるために戦い方を変え腕を磨いてきた。並々ならぬ努力は、すべて黒鷹への執着。
黒鷹は立て続けに襲ってくる刀をさらに反ってかわそうとして体勢を崩し、かろうじて刀で弾いたが転倒。さらなる追撃が来ていたので転びながら、もう片方の刀を振り上げ白鴇の左肩を斬りつけた。
「痛いよ。僕を、本物の弟である僕を今でもずっと大好きでいてくれてるんでしょ?なのに斬れちゃうんだ?」
「大好きだよ、白。大好きだからこそ、戦うんだ。お前を斬って、僕も死ぬ。今度こそ一緒だ」
美しき兄弟、目を閉じて会話だけ聞けば。目を開ければ兄弟喧嘩という名の殺し合い。
全てを見届ける傍観者として、小紅は「上手くいかないものなのね」と小さく溜め息をこぼす。あぁ、こんなにも悲しい笑顔は初めて見た。
黒鷹も白鴇も、笑っている。
黒鷹も白鴇も、ツウと悲しい涙を流しながら必死に刀を振るっている。笑いながら、泣きながら刀を振るう。異様な光景。
3振りの魂と白銀の刃が、2人の動きが徐々に早く激しさを増していく。2人が生み出す風が小紅の髪をもてあそび、2人が生み出す衝撃波が小紅の体を震わせる。
両者互角か、さすがは双子。それぞれがお互いの動きを読んでいる。
3本の刀が振るわれるたび、血しぶきが舞う。いつの間にか2人の間に言葉の会話はなく、代わりに繰り出される一撃一撃に想いを込めて繰り出す。
斬りつける。蹴る。叩く。また斬る。何度も何度も繰り出される攻撃が、2人の体力を少しずつ削っていく。
畳の、赤くなっていく範囲が増えていく。あたりに血の匂いが充満し始めた頃。白鴇が夜鷹の刀を「ガキィンッ!」と弾き飛ばした。
同時に、体当たりも同然に和鷹の刀が白鴇の右肩に深々と突き刺さる。彼は勢いに押されて尻餅をついた。
「いっ……痛い、よ……痛いよ兄さんッ!腕も、足も、お腹も肩もすごく痛いッ!でも、1番痛いのはここ……ずーっと、ずっとずっと痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くて痛くてたまらないんだよぉッ!!!!」
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