鷹の翼

那月

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三上黒鴇

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 黒鷹は白鴇を殺せないとわかっていながらも、殺す覚悟で刀を振るう。手は抜かない。最初から本気の二刀流だ。

 白鴇は裏切った兄に復讐するために刀を振るう。命まで奪おうとしているのかはわからないが、そう簡単には殺さない。

「「あぁ本当に、怖い子だね」」

 似てないとはいえさすがは双子。同時に呟いて、同時に目を合わせた。それが合図だった。

 お互いに相手の刀を弾き、同時に黒鷹が白鴇の腹を蹴って跳び下がる。足元にあった文机を彼へと思い切り蹴り飛ばすと床を蹴った。

 対する白鴇は意外にも慎重。腹を蹴られると同時に飛び下がり衝撃を緩和、飛んできた文机はギリギリで避けて次の攻撃に備え構える。

 斬りかかっては離れ、床や壁を蹴ってまた斬りかかる黒鷹。彼があまり攻撃してこないのに不信感を抱いているようだが、それでも攻撃の手を緩めない。

 さすがは、剣術に愛された男の弟子。剣術に愛された男とは夜鷹のことだ。彼は最初から最後まで我流を貫き通した。

 元々から剣術の才能があった黒鷹をさらに強く育てたのは夜鷹。自分の我流を継がせたんじゃない、黒鷹の好きな動きに合わせた剣術を一緒に作ったんだ。

 だから、黒鷹は流れるように2本の刀を振るい続ける。本能的に身を引きたくなるように目や耳を狙い、怯んだ隙に斬りつける。

 どんどん速くなる彼の動きを確実に目で追っている。紙一重で避け、しかし刀が壁に当たって注意が逸れ足を斬られる白鴇。本当に、油断していた?

 何か、時を待っているのか?黒鷹の動きを追っている薄灰色の隻眼が時々、小紅の方に向けられている。

 隙あらば黒鷹の弱点ともいえる小紅に刃を向けてやろうと思っているのか?いや違う、彼は小紅ではなくその奥を見ている。

 小紅はこの勝負、どちらが勝つと予想する?あ、白鴇と目が合った。チラリと後ろに目を向け、また白鴇に戻す。

「心配しなくても家臣達は誰も来ませんよ?皆さんが足止めしてくださっていますから。何も気にせず、思いきりどうぞ」

「そういえば静かすぎると思ったんだよ。深夜だからにしても、ここに来るまで誰とも会わなかったし」

「なぁんだ、じゃあ我慢なんかしなくてもいいんだね。これでようやく思いっきり動けるよ……ッ!!」

 白鴇が爆発した。そう表現するにふさわしいほどの、殺気が彼の体から解き放たれた。鋭く光る瞳が、濃密でドス黒い殺気が黒鷹を後ずらさせる。

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