277 / 386
三上黒鴇
5P
しおりを挟む黒鷹は白鴇を殺せないとわかっていながらも、殺す覚悟で刀を振るう。手は抜かない。最初から本気の二刀流だ。
白鴇は裏切った兄に復讐するために刀を振るう。命まで奪おうとしているのかはわからないが、そう簡単には殺さない。
「「あぁ本当に、怖い子だね」」
似てないとはいえさすがは双子。同時に呟いて、同時に目を合わせた。それが合図だった。
お互いに相手の刀を弾き、同時に黒鷹が白鴇の腹を蹴って跳び下がる。足元にあった文机を彼へと思い切り蹴り飛ばすと床を蹴った。
対する白鴇は意外にも慎重。腹を蹴られると同時に飛び下がり衝撃を緩和、飛んできた文机はギリギリで避けて次の攻撃に備え構える。
斬りかかっては離れ、床や壁を蹴ってまた斬りかかる黒鷹。彼があまり攻撃してこないのに不信感を抱いているようだが、それでも攻撃の手を緩めない。
さすがは、剣術に愛された男の弟子。剣術に愛された男とは夜鷹のことだ。彼は最初から最後まで我流を貫き通した。
元々から剣術の才能があった黒鷹をさらに強く育てたのは夜鷹。自分の我流を継がせたんじゃない、黒鷹の好きな動きに合わせた剣術を一緒に作ったんだ。
だから、黒鷹は流れるように2本の刀を振るい続ける。本能的に身を引きたくなるように目や耳を狙い、怯んだ隙に斬りつける。
どんどん速くなる彼の動きを確実に目で追っている。紙一重で避け、しかし刀が壁に当たって注意が逸れ足を斬られる白鴇。本当に、油断していた?
何か、時を待っているのか?黒鷹の動きを追っている薄灰色の隻眼が時々、小紅の方に向けられている。
隙あらば黒鷹の弱点ともいえる小紅に刃を向けてやろうと思っているのか?いや違う、彼は小紅ではなくその奥を見ている。
小紅はこの勝負、どちらが勝つと予想する?あ、白鴇と目が合った。チラリと後ろに目を向け、また白鴇に戻す。
「心配しなくても家臣達は誰も来ませんよ?皆さんが足止めしてくださっていますから。何も気にせず、思いきりどうぞ」
「そういえば静かすぎると思ったんだよ。深夜だからにしても、ここに来るまで誰とも会わなかったし」
「なぁんだ、じゃあ我慢なんかしなくてもいいんだね。これでようやく思いっきり動けるよ……ッ!!」
白鴇が爆発した。そう表現するにふさわしいほどの、殺気が彼の体から解き放たれた。鋭く光る瞳が、濃密でドス黒い殺気が黒鷹を後ずらさせる。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
白露~或る二本松藩藩士の物語~
篠川翠
歴史・時代
別作、「鬼と天狗」の五番組の一員として出てくる笠間市之進。戊辰戦争の頃は糠沢組代官として活躍し、ある密命を帯びていたと笠間家には伝えられています。
ご子孫の方から伺った笠間家の伝承と、白沢村史収録の史伝を合わせながら、独立の短編にしてみました。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて
ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。
真田源三郎の休日
神光寺かをり
歴史・時代
信濃の小さな国衆(豪族)に過ぎない真田家は、甲斐の一大勢力・武田家の庇護のもと、どうにかこうにか生きていた。
……のだが、頼りの武田家が滅亡した!
家名存続のため、真田家当主・昌幸が選んだのは、なんと武田家を滅ぼした織田信長への従属!
ところがところが、速攻で本能寺の変が発生、織田信長は死亡してしまう。
こちらの選択によっては、真田家は――そして信州・甲州・上州の諸家は――あっという間に滅亡しかねない。
そして信之自身、最近出来たばかりの親友と槍を合わせることになる可能性が出てきた。
16歳の少年はこの連続ピンチを無事に乗り越えられるのか?
【アルファポリスで稼ぐ】新社会人が1年間で会社を辞めるために収益UPを目指してみた。
紫蘭
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの収益報告、どうやったら収益を上げられるのかの試行錯誤を日々アップします。
アルファポリスのインセンティブの仕組み。
ど素人がどの程度のポイントを貰えるのか。
どの新人賞に応募すればいいのか、各新人賞の詳細と傾向。
実際に新人賞に応募していくまでの過程。
春から新社会人。それなりに希望を持って入社式に向かったはずなのに、そうそうに向いてないことを自覚しました。学生時代から書くことが好きだったこともあり、いつでも仕事を辞められるように、まずはインセンティブのあるアルファポリスで小説とエッセイの投稿を始めて見ました。(そんなに甘いわけが無い)
不屈の葵
ヌマサン
歴史・時代
戦国乱世、不屈の魂が未来を掴む!
これは三河の弱小国主から天下人へ、不屈の精神で戦国を駆け抜けた男の壮大な物語。
幾多の戦乱を生き抜き、不屈の精神で三河の弱小国衆から天下統一を成し遂げた男、徳川家康。
本作は家康の幼少期から晩年までを壮大なスケールで描き、戦国時代の激動と一人の男の成長物語を鮮やかに描く。
家康の苦悩、決断、そして成功と失敗。様々な人間ドラマを通して、人生とは何かを問いかける。
今川義元、織田信長、羽柴秀吉、武田信玄――家康の波乱万丈な人生を彩る個性豊かな名将たちも続々と登場。
家康との関わりを通して、彼らの生き様も鮮やかに描かれる。
笑いあり、涙ありの壮大なスケールで描く、単なる英雄譚ではなく、一人の人間として苦悩し、成長していく家康の姿を描いた壮大な歴史小説。
戦国時代の風雲児たちの活躍、人間ドラマ、そして家康の不屈の精神が、読者を戦国時代に誘う。
愛、友情、そして裏切り…戦国時代に渦巻く人間ドラマにも要注目!
歴史ファン必読の感動と興奮が止まらない歴史小説『不屈の葵』
ぜひ、手に取って、戦国時代の熱き息吹を感じてください!
生克五霊獣
鞍馬 榊音(くらま しおん)
歴史・時代
時は戦国時代。
人里離れた山奥に、忘れ去られた里があった。
闇に忍ぶその里の住人は、後に闇忍と呼ばれることになる。
忍と呼ばれるが、忍者に有らず。
不思議な術を使い、独自の文明を守り抜く里に災いが訪れる。
※現代風表現使用、和風ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる