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三上黒鴇
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しおりを挟む「兄さんのじゃない。ふうん…………兄さん、僕を殺しに来たのに、自分の刀を使うのが怖いんだ?それとも、これはあの偽物のオトウトクンのかなぁ?敵討ちだーっていうのかなぁ?」
「和も白も、僕の大事な弟。敵を討つのは当たり前だろう?人1人の命を奪ったんだ、覚悟はしているよね?」
「あはっ、あははははっ!その状態でよく言う。信頼してた妻に命を握られて眼球しか動かせないくせに、この僕を殺せるの?」
自分に向けられた刀の背をわざとらしくツウと指でなぞり、その色白の細い手は黒鷹の手に触れた。
女のように細く白い指。病気のせいで若干は細くなっているものの、切り傷とマメのあとが残っている黒鷹の手は、しかし動じない。
白鴇が黒鷹と目を合わせたその瞬間、夜空色の瞳に光が宿った。
刀を握る手にグッと力が入り、一切の手加減なく振り上げられる。ブンッ!間一髪、わずかに前髪を斬られるだけにとどめた白鴇は跳び下がり刀を構える。
本能的に危ないと察知したのだろう。昔の、弱いままだった白鴇なら首が飛んでいた。
刀が迫ってきたのが白鴇の右側だったからというのもある。顔の右半分が火傷、右目を潰している彼にとっては不幸中の幸いか。
「…………一体何のつもり、赤い人?」
赤い人って、もしかして小紅のことか?とても怖い顔で睨みつけているのは斬りかかってきた黒鷹ではなく、その後ろで短刀を下ろしている小紅。
黒鷹の首には傷ひとつない。小紅の短刀をもろともせず、というわけではなく小紅が黒鷹の動きに合わせて短刀を引いたのだ。
まるで、小紅が短刀を引くのをわかっていたから突っ込んだような。黒鷹が突っ込むのをわかっていたから短刀を引いたような。
「私はあなた様に雇ってもらった時、条件付きで用心棒になったはずです。覚えていますか?」
「…………」
あぁ、忘れている。子供のように悔しそうな顔をしているぞ。思っても見なかったことにマトモに頭が働かなくなっているか。
小紅も黒鷹も、白鴇に考える時間をと大人しく待っていたが。沈黙の末、小紅が小さく溜め息を吐いた。
「命をお守りするのは1度きりだと、お守りした後はあなた様の用心棒を終えますとお約束しました。これより先、私は自由にさせていただきます」
「…………すべては兄さんの計画だったのか?この僕をだますなんて、恐ろしい女だな」
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