鷹の翼

那月

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広い屋敷、静かな家

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 白鴇だって黒鷹が自分を襲撃に来ることくらい察しがついていることだろう。なにせ、間接的とはいえ黒鷹にとってもう1人の弟である和鷹の命を奪ってみせたのだ。

 自分の存在を、想いを意識させ復讐を考えさせるのが白鴇の思惑。兄に構ってほしい弟、というには少々度が過ぎる。

「白はとっても寂しがり屋なんだ。コホッコホッ……僕と一緒にいる時間が長すぎた。僕から離れて、自分の足で立って歩いてほしいと願っていたんだけどね」

 白鴇は黒鷹に依存している。三上浩之進の娘である沙雪と結婚してもなお、愛しているはずの妻よりも黒鷹を選んでしまう。

 心から信頼している黒鷹に捨てられたと思ったから。だから、黒鷹から大切なものを奪った。

 夜鷹も葬り去ろうとした。けれど彼は白鴇が手を出すより早く、病によって死んでしまった。殺す手間が省けたと、思ったのかもしれない。

 白鴇にとって夜鷹は、黒鷹を奪った極悪人。憎悪に呑まれて本当が見えなくなってしまった白鴇の目には、今の黒鷹が悪に染められてしまった哀れな兄に見えているのかもしれない。

 夜鷹がいなくなっても黒鷹は戻ってこない。だから黒鷹が正気に戻るように、自分が手を下す。黒鷹を救う。下手をすればそんなことさえ考えているのかもしれない。

 歪んだ重い想い。白鴇を止める者は、彼のそばにはいなかった。…………本当に?

 そして夜鷹の次に白鴇は、黒鷹にとって大切な和鷹に目をつけた。白鴇にとっては1番邪魔な存在だった。

 自分こそが本物の黒鷹の弟なのに、和鷹こそが黒鷹の弟なのだと世間に知られているから。喧嘩が絶えなくても、2人はお互いを認め合っていたから。

 あとは家族も同然の鷹の翼の仲間達と、最近加わった小紅。夫婦になったと知られれば確実に狙われてしまう。

 それを阻止するためにも、白鴇の手がまだ届かないうちに、黒鷹は白鴇と決着をつけようと決めた。

 考えを巡らせる黒鷹は、墓の周りをゆっくり歩いた。たまに激しく咳き込んで立ち止まり、そして血を吐く。手と口元と着物を赤く染めても、また歩き出す。ピタリ、止まった。

「近藤、怒ってたなぁ。紅ちゃんとの子供を作ってやれとか恥ずかしいこと言ってたし。僕だって、これでも真剣に紅ちゃんを愛しているからそういうこともしたいって思うけどさ」

 ポツリポツリと呟きながら、赤面。小紅とのことを想像でもしているのか?鼻血は出すなよ。

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