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約束
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しおりを挟むもしも黒鷹に出会わなくて新選組として土方の小姓を続けていて、果たして他の誰かと夫婦になれただろうか?
縁談があって誰かと夫婦になったとしても、黒鷹との幸せ以上の幸せを感じることはないと、はっきり言い切れる。それくらい、今の魅堂小紅は幸せに満ち溢れている。
そしてそれは黒鷹も同じ。小紅だからこそ、ずっと死ぬまで隠し通そうとした病を打ち明けた。打ち明けてもなおまっすぐ見つめる小紅を受け入れ、自分の鎖を解き放った。
「俺っちでもすぐにわかったわ。頭領、いっつも飄々としとるんやけどな。小紅ちゃんが来る前と来てからとじゃあ全然、表情とかが変わっててん。よう笑うようになったし、柔らこうなった」
「そ、そんなわかりやすいのですか?でもこの“誰かを愛する”想いは、どうやっても消すことはできませんね」
相手は騙し続けなければならない敵の頭だけれど。信頼関係を築いて、得た情報を新選組に流さなければならないのに。
どうしても罪悪感が胸の中に渦巻く。小姓としてそばにいるとホッとする。時々用事があって、小紅が他の者と使いを頼まれて黒鷹のそばを離れる時、少しの間でも寂しかった。
その感情が何なのか、わかって何度も消そうとした。嫌いになろうとした。できなかった。
「俺っちにとっては鳶が、小紅ちゃんにとっては頭領が運命の人。もう何も疑ってへんし、奥さん同士また話しようや。大丈夫。もう、何も気にせんでえぇから、俺っちは大丈夫や!ありがとうなっ!」
明るい明るい雪。いつか、鳶も心からニッコリ笑える日が来るのかもしれない。雪ほどではないだろうが。
なんて考えながら「はい、よろしくお願いします」と微笑むと、黒鷹が戻ってきた。あぁ、長い厠だったな。
「紅ちゃん、ちょっと一緒に来てほしいんだけど、いい?」
「もちろん、どこへでもついていきます。桜鬼さんが高遠さんをいじめすぎないか心配ですが。雪さん、もしもの時は喧嘩両成敗で」
「おう、まっかせときい!」
こちらも長い。桜鬼の動きにも慣れてきて、最初は負けてばかりだった高遠は今では互角。お互いに傷が増えてきつつあるので、さすがに心配になった。
黒鷹に手を引かれる小紅に頼まれた雪は、ブンッ!と拳を振り上げて2人に睨みを利かせる。雪の喧嘩両成敗、きっと気絶するぞ。
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