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約束
3P
しおりを挟むというのも、小紅が左手を叩かれたところから黒鷹の表情が険しくなっていた。3戦目が始まると同時に「次に怪我をさせたらどうなるか、わかってるよね?」なんて言われれば、誰だってすくみ上がる。
だから本当なら、小紅の動きに慣れてきた高遠が勝っていた。繰り出した攻撃が当たる寸前に歯を食いしばって勢いを殺していたし、小紅の動きも少し目で追えていた。
とぼける黒鷹に苦笑する小紅に「愛されとるんやなぁ」と笑う雪。その雪も、傷つけられれば鳶が過剰に反応して相手を滅多打ちにしてしまうのだから愛とは恐ろしいものだ。
「丸、お茶淹れてくる。ちょっと待っててにゃー」
そう言って猫丸がいなくなり、黒鷹も立ち上がって厠に行ってしまった。残った3人はそのまま、高遠と桜鬼の勝敗の行方を見守る。
「とおっ!あー、やっと怖い人おらんなったわぁ。小紅ちゃん最近、えぇ匂いしよるから抱きつきとうて。ちょっとだけや、えぇやろ?なっ?」
「わあっ!?び、びっくりしたぁ……あ、はい、少しだけならいいですよ。何も持っていないのですが、何の匂いだろう?」
突然、雪が小紅に抱き着いた。幸せの匂いでもするのか、犬のようにクンクン匂いを嗅ぐ姿はもはや変態だ。
小紅の視界の隅で白いものがちらちら見えると思ったら、雪の髪の毛だった。思わず指でつまんで、眺めてみる。
加齢による白髪とはまた違った、艶のある綺麗な白。若干透き通っていて、光が反射すると所々が光って見える。
「かつらやあらへんで?俺っちの髪は生まれつき、こんなんやったんや。おかげで散々な目に遭うたわぁ。気持ち悪い、人間やあらへんとかいうていじめられたり。かと思うたら神様の生まれ変わりやいうて崇められたり」
小紅が物珍しそうに眺めているものだから、雪は明るく笑いながらプツンッと髪の毛を1本抜いて光にかざした。
「俺っちは特別なんや。この髪をお守りにして持っとったら願いが叶う。煎じて飲めば賢うなる。物心ついた時にはそんな、根も葉もない噂が流れとって髪切って売られてたんやわ」
唐突に、雪は昔話を始めた。これに驚いたのが、無表情に焦りがにじんで見える鳶。雪の背中から顔を上げた。
心配そうに雪の手に自分の手を重ね、ジッと見つめる。目で語る?
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