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想い
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しおりを挟む「やっぱり紅ちゃんは鋭いね。咳も我慢して、上手く隠せていたと思っていたのに。病のことを知ったうえで僕のことを愛してくれるなんて」
黒鷹は自分が結核に侵されているから、浩之進が同じ病だと気づいた。いずれは黒鷹も、浩之進のように若くしてこの世を去る。
情報屋の千歳は“鷹の翼の頭領の魅堂黒鷹は結核である”という情報を彼から買い、その金で黒鷹は薬を千歳から買っていた。
その薬ももうほとんど効果がなくなり、次で最後。薬を諦め、自然にその時が来るのを待つ。
本物の両親も白鴇も浩之進も和鷹も、夜鷹も気づけなかった。けれど小紅が気づけたのは、彼女の身近に同じ病を抱えた者がいたから。
「新選組に、同じ方がおられます。時々、看病をしていましたから……」
「沖田総司、か。同じ匂いがするからなんとなく、うっ、そうだと思ったんだよね。コホッコホッ」
新選組内部でも沖田が結核であることを知っているのは幹部の一部のみ。病を隠している者と存在を隠されている者、沖田が体調を崩した時は忙しい土方の代わりに看病していた。
黒鷹の咳が小紅の胸を締め付ける。あと、どれくらい生きられるのだろう?
とりあえず涙が治まって、心の思うままに「寂しいです」と彼にしがみつく。そうしたところで病が治るわけでも、進行が遅くなるわけでもないのに。
今は、黒鷹を愛する1人の女として。胸の内に秘めてきた想いをぶつける。
「初めて会った時も思ったけど、紅ちゃんって積極的で大胆だよね。ここまで頑張ってくれるんだもん、僕も素直に打ち明ける」
ずっと小紅の頭や背中を撫でていた右手で顎をつかみ、上を向かせる。涙で潤んだ赤黒い瞳いっぱいに黒鷹の、真剣な顔が映った。
今まで見たことのない、真剣だけれどちょっとだけ緊張している、でも優しい表情に胸の奥がトクンッと熱く熱を上げる。
顔を背けて深呼吸。2回。遠くを見つめて、そして再び小紅へと顔を向けるとニコッと微笑んだ。
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