鷹の翼

那月

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想い

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「ひっ、ひゃあぁぁぁああぁぁぁぁぁっ!!?」

 それはもう、永遠の眠りに入っている和鷹さえ飛び起きて「やかましいっ!」と殴りがかりそうなほどの絶叫。

 超至近距離でその絶叫に耳を貫かれた黒鷹はビクンッ!と目を覚まし、たまらず両手で耳を塞いだ。

「も、申し訳ありません。いやでもっ!どういう状況ですかこれはっ!?まさか私、眠っている間に動いて……」

「そうそう、夢うつつで『黒鷹様』って言いながら入ってき――う、嘘です嘘です嘘です、ごめん。寒いし、座ったまま寝させるなんて嫌だったから温めてあげようと思って。あ、やましいことは何もしてないよ?」

 黒鷹の嘘に小紅がひと睨み。笑顔を引きつらせた黒鷹はしょぼんと目を背け、もう1度「ごめんね」と謝った。

「私の想いを知っていてこれですか。声が戻ったのは良かったですが、びっくりさせないでください。それから、起きますから放してください」

 謝りながら、さりげなくまた小紅を逃げないように抱きしめる。ニコッ。

「やだ」

「子供ですか。皆も黒鷹様のことを心配しているでしょう。この姿を見られてよからぬ誤解を生んではあとあと面倒になりますよ?」

「誤解?お互いを想い合う男女が1つの布団に入ってるのなんて、普通。誤解なんかされないよ」

 小紅、目をパチクリ。黒鷹は今なんて言った?お互いを想い合う男女?誰と誰が?というかここ、和鷹が眠る部屋だぞ。すぐ隣にいるぞ。

 一旦思考停止し、彼の言葉の真偽と意味を考えている小紅の様子に「クスクス」笑う声が聞こえる。

 すると外から「もういい加減起きてるだろうが」とか「頭領は無理に起こすと怖いからねぇ」とかいう声が聞こえてきた。

 2人分の足音は部屋の前で止まり、沈黙。どうした?小紅は我に返って大慌て。黒鷹は気にする様子もなくがっちり小紅を抱いたまま首を向ける。

「と、頭領、起きてる?入るよ――えっ!!?」

 黒鷹が「いいよ」と返事をしたのと小紅が「だめですっ!」と叫んだのと障子が開いたのがほぼ同時。

 小紅の叫びもむなしく障子は開かれてしまい、まさかの光景に来訪者――桜鬼と高遠は体をこわばらせた。

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