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想い
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しおりを挟む「私、小紅は魅堂黒鷹様を心から慕い愛しています。あなたが1人で最期を迎えることのなきよう、おそばにいたくて新選組を裏切りました」
言った。とても自然に、緊張はしているがしっかりとした口調で想いを告げた。
もう見失わない。小紅がどんな道を進むのかは小紅が決める。進む道は小紅自身が作る。
真剣な小紅を見つめる黒鷹の表情に、驚いた様子はない。落ち着いていて、見つめるばかりで何を思っているのかがわからない。
少し下がり、畳に両手の指を綺麗にそろえておろし「何も言わなくて結構です。身勝手ですがまた、明日にしましょう」と深々と頭を下げる。
黒鷹が弱ってしゃべれないことを良いことに、勝手に告白しておいて自己満足か?
彼は小紅に甘いから、嫌がるそぶりは一切見せずにうなずいて目を閉じた。ちょっと、素直すぎやしないか?
けれど、やっぱり黒鷹はただでは従わない。小紅の手をしっかり握っている。そばにずっといると言っていたのに、まるでどこにもいかないでとでもいうようにその手は力強く小紅を離さない。
黒鷹は果たして小紅の想いに気付いていたのか?明日、黒鷹は何と返事をするのか。
小紅は永遠の眠りについた和鷹に、こんなところで告白されるなんて思ってもみなかったであろう、静かな寝息を立てて眠る黒鷹に「おやすみなさい」を告げた。
魅堂黒鷹という名前は、性も名も夜鷹にもらったものだった。本名は三上黒鴇。この三上の姓も本来のものではないが、元々の彼の苗字は最後まで教えてはくれなかった。
彼なりにけじめをつけたのだろう。どっちの名も黒い鳥を表す。生まれた時に黒い鳥が近くにいたのだろうかとか、彼の昔話を思い出していた小紅。
不覚にも、目を覚ますと朝になっていた。しかも、すぐ目の前に黒鷹の顔がある。穏やかに眠る綺麗な寝顔だ。
それに温かい。手は握っているので温かいのは当然だが、なぜか体全体が温かい。そして、息を吸い込めば黒鷹の匂いが肺いっぱいに広がる。
状況を把握するまで、呼吸を3回。自分が黒鷹の布団の中に、しかも彼の腕にしっかり抱かれているのだと気づくと大きく口を開いた。
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