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想い
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しおりを挟む崩したのは小紅だ。元々は新選組の間者として潜入していた敵だったのに、同じ屋根の下で過ごしていくうちに自分の役目に疑問を抱くようになった。
それはやがて役目の放棄と、彼らとずっと一緒にいたいという強い想いへと変わっていった。
慕ってくれる頼もしい仲間がいるのに、今にも壊れてしまいそうな危ない橋を1人で渡る黒鷹から目が離せなくなっていた。
あぁ、この人は1人なんだ。それを望んでいる。でも、この人のそばにいたい。
誰も気づかないなら自分が気づいて手を引いて、まっすぐ向き合って「やめて」と声をかける。力になりたい、支えたい。この人の全てを受け入れたい。
ずっとずっと、この先もずっと、最期の時まで黒鷹のそばにいたい。
いつの間にか芽生えていた自分の熱い想いに、小紅も背を向けていた。そんな感情を抱いてはいけないと。けれど、今は受け入れて強く望んでいる。
どんなに突き放されても、そのたびにしがみついてでもそばにいる。彼がどこに行こうとついていく。そう決めた。
声を上げ、共に涙を流す小紅の想いを、黒鷹は気づいているのだろうか?
泣きながら、何度も何度も白鴇と和鷹の名前を叫んでいた。感情のままに、悲痛な叫び声はきっと離れた所にいる仲間達の耳にも届いていることだろう。
眠っていた鳶が目を覚ますほどの黒鷹の想いは、鷹の翼の屋敷中に響き渡る。
子猫を抱きしめる猫丸の、怪我の手当てをしている高遠の、桜樹と対話していた桜鬼の、抱きしめ合っている雪と鳶の、密かにまだ庭で狐モドキを回収していた千歳の、心に響き渡る。
こんなことになるなんて、誰が想像できた?小紅が鷹の翼にやってきた時から全ての時が、急速に進んだ。
小紅は結局本当に新選組の間者だったし。けれど寝返って、黒鷹の小姓を続ける。鷹の翼の一員であることを選んだ。選ばせてもらった。
黒鷹と和鷹は本当は兄弟ではなく、しかも和鷹の父親はだらしない新選組の隊士だったが死んでいるとか。
挙句、黒鷹の本当の弟は嫉妬と長年の憎しみから和鷹を間接的に殺した。新選組をも操って、黒鷹を、その仲間である鷹の翼を葬ろうとしている。
諦めてはいない。次がある。果たして、次が来るまでに白鴇を止めることはできるのか?なにせ相手は、小さいとはいえ城主だ。
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