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白と黒と光と影
14P
しおりを挟む黒鷹のことも浩之進のことも、いつも頭がいっぱいでおかしくなりそうだった。発狂してどうにかなってしまいそうだと、心の拠り所になった沙雪に弱音を吐いていた時。
町で黒鷹によく似た少年がいたという情報が入った。しかし1人ではない。父親か年の離れた兄か、男と一緒だったと。
その時はすぐに姿を消してしまって声もかけられなかったが2度目、数日後にまた現れた。
運よくこの日、白鴇は町に来ていた。ちょうど飴屋の店主が呼び止めていて、白鴇はその姿を薄灰色の瞳に映す。
それはまさしく兄の黒鷹だった。隣には背が高い青年、魅堂夜鷹。
「やぁ白、元気そうだね。やっと三上の城主になったんだってね、おめでとう」
「何で……何で出て行った!何がおめでとうだよっ!!あんな嘘まみれの手紙なんか書いて勝手に出て行って、皆、すごく心配してるのに……っ!」
「嘘じゃないさ。白が楽しそうだったから、白のために一緒にいた。あそこでの暮らしは前から比べたらそりゃあ良いものだったけど、正直、退屈なんだよね」
「嘘だ、そんなの。兄さんは嘘を吐くのが得意だから……」
「誰かのために自分の自由を犠牲にするの、もう嫌なんだよ。白もしっかりしてきたから、潮時だと思ったんだけどまだ早かったかなぁ?」
「僕は全然、しっかりなんかしてない。兄さんがいないと、僕はダメなんだよ」
「今までは兄弟だからって一緒にいるのが当たり前だった。でも、これからは違う。それぞれの意思を持って自分の道を歩む。大丈夫だよ白なら、皆がついてる」
「嫌……お願い、戻ってきてよ、兄さん!僕、兄さんのためなら何でもするからっ!」
「それは違う。これからは僕も白も好きなように生きる。だから、僕は今こうして夜鷹さんのもとにいる。僕はもう、三上黒鴇じゃない…………魅堂黒鷹なんだよ」
泣きながら縋りつく白鴇の肩をつかみ、離す。すぐにまた伸ばされた白鴇の手を、黒鷹は口元に笑みを浮かべながらパシンッ!と叩いた。
現城主が泣き叫ぶので周りの町人達が集まり、いつの間にか黒鷹達を取り囲んでいる。
白鴇が叩かれてすぐに反応したのが、黒鷹の顔を覚えていた飴屋の店主。白鴇を背に庇い、黒鷹を睨み付ける。
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