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白と黒と光と影
13P
しおりを挟む来る日も来る日も、朝早くから夜遅くまで探した。町中の人達に声をかけて、時には隣町まで足を延ばして探した。それでも、黒鷹は見つからない。
ずっと返事を待っていた浩之進には佳代から事情が説明され、ある日、白鴇は浩之進に呼ばれた。
すっかりやせ細ってしまっていた白鴇に浩之進は「探すのはやめなくともよい。だが、某の後継ぎには白になってほしい。すまんがどうやら、某にはもう時間がないようだ」と、言った。
起き上がって佳代に支えてもらいながら、浩之進は白鴇の手を握ってまっすぐ真剣に見つめる。
今思えば、浩之進は黒鷹がこうすることを予測していたのかもしれない。現実と向き合い、優先すべきことを見極めて取り組んでいる。
白鴇は「兄さんを見つけて連れ戻す。城主を継ぐのは兄さんだ」と言って聞かない。
ボロボロ泣きながら何度も「絶対、見つけるから」と呟く白鴇に「ではもう1度黒のことを考えてみなさい。兄ではなく、黒のことを」と言葉を最後に、浩之進は眠った。
それから数日後、三上浩之進は城主の座を三上白鴇に譲り隠居に。白鴇は沙雪と婚約し、佳代や家臣達に支えられながら役目に勤め、そして黒鷹を探し続けた。
勉学や鍛錬、城主の仕事もこなしつつ町人との交流も怠らない。そのうえ、少しでも時間を作っては兄を探している白鴇を不憫に思った例の飴屋の店主。
自分も黒鷹探しを手伝うと名乗りをあげ、店主の声掛けは飴屋の常連客の耳に入りその常連客も探してあげると、いつしか町全体が黒鷹を探すようになった。
人々のつながり、助け合いのすばらしさを白鴇は感じた。これも、城主だった浩之進が築き上げた信頼だろう。
それでも、しばらくたっても黒鷹は見つからない。一体どこに身を潜めているのか?1人ではないのか?なぜ、城を出て行ったのか?
聞きたいことはたくさんある。もし見つけても、手紙に書いてあったように黒鷹は白鴇の元には戻らないと言う。それは白鴇にもわかっている。
手紙に書いてあったことのほとんどが嘘だということも、ずっと一緒に過ごしてきた白鴇にはわかる。
それでも、疑ってしまう。もしも本当に城にいるのが嫌になったのだとしたら。あまりにも長い時間、白鴇と一緒にいて嫌になってしまったのだとしたら。
不安で不安で、夜も寝られない。浩之進は浩之進で日に日に弱っていくし、明るく振る舞ってはいてもあと1年は持たないことは明白。
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