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白と黒と光と影
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しおりを挟む男の言葉に嘘偽りはない。その証拠に、指を差された黒鷹が「本当だよ」と小さく呟く。
「こうするしかなかったんだ。父様も母様も話が通じる相手じゃない。殺さないと白が……僕達が殺されていたから」
あの日、白鴇を迎えに来た時の黒鷹は全身に血がついていた。黒鷹自身も怪我をしていたのでその血も混じってはいたが、ほとんどは返り血。
あれは両親を手にかけた時のものだったのか。いや他の、使用人達とも戦っていたのかもしれない。
町奉行は盗賊集団による仕業だ、子供2人は人質か人身売買用にさらわれたと思い込んでいるようで今も血眼になって探しているんだとか。
まさか、子供の黒鷹が1人で起こしたことだとは夢にも思うまい。
「……茶でも淹れてこよう。なに、心配せずともお前達2人くらい某が養ってやるさ。これからはここが我が家だと思って過ごすがよい」
2人の口が閉じて何とも暗く重い空気になってしまったため、男は明るくそう言って部屋を出て行った。
あの男、一体何者なのだろうか?2人を養うとか言っていたが、白鴇はともかく重罪人の黒鷹を隠し育てるつもりなのか。
しかしそんなことよりも。白鴇は自分に向かって伸ばされた黒鷹の手を、反射的に避けた。
生き抜くためとはいえ屋敷に火を放ち、両親を殺したその手が、血で真っ赤に染まって見えたから。
「僕が怖い?憎い?本当はね、できると思わなかったんだ。強くなったって言っても子供だし。でも白のためにって強く願ってたら、できたんだ」
「こ、怖いよ。でも、父様と母様の方が怖かったから、憎いとは思わない。本当に強いんだね、兄さんは」
皮肉にも、黒鷹を精神的にも肉体的にもここまで強くしたのは両親だ。全ては家のために。鍛え上げられてきた優秀な兄は、虐げられ続ける弟のために家を潰した。
自分が何をしたのか、事の重大さはわかっている。罪を償うことも考えている。
白鴇が1人で生きていけるようになれば、その時が来れば黒鷹は彼の前からひっそりと姿を消すよう心に決めている。
それを、見抜いたのか?1度は避けた黒鷹の手を、両手で包み込む白鴇は言った。
「兄さんの罪は僕の罪。兄さんをそうさせた責任は僕にもあるから。僕達はずっと一緒だよ」
両親を殺した手を温かい手で握り、見つめて、微笑む。それだけで十分だった。黒鷹は目に涙を浮かべて「ありがとう」とうなずく。
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