鷹の翼

那月

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出遭う

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「待ってて。必ず、絶対に助けに行くから。僕と一緒にここを出よう。もう決めた。約束だよ、白鴇」

 白鴇の薄い灰色の瞳は映した。決心し、強い光を宿した夜空色のまっすぐな瞳を。何も恐れない、自信に満ち溢れた兄の顔を。

 信じたいと思った。信じて、待っていようと決めた。ここで黒鷹と分かれたあとに何が起ころうと、いつか必ず助けに来てくれる兄の手を待っていようと決めた。

 だから白鴇は「ありがとう」と、涙をこぼしながら目一杯の笑顔で別れを告げると再び暗がりの中へと消えていった。

 翌朝。黒鷹と会っていたところを偶然通りがかった使用人が見てしまったらしく、両親に知られた白鴇は罰として窓のない小屋に閉じ込められる。

 抵抗はしなかった。必ず、黒鷹が助けに来ると信じているから。そう約束したから。

 小屋という名の檻に閉じ込められ、ほんのわずかな食事のみ与えられるという、生かされている生活。どんなに孤独で発狂しそうになっても、そのたびに兄との約束を思い出し兄を想う。

 そんな生活が数年続いたある日。急に外が騒がしくなったので、読んでいた書物を手に小屋の中をウロウロする白鴇。

 賊でも入ったのか?ちょっと焦げ臭い匂いもするし、屋敷に火をつけられたのか?

 武器もない、逃げ場のない白鴇はただゆっくり迫りくる死を待つことしかできないのか。騒がしい声が大きくなって匂いも強くなってくる。

 どうにかして脱出しないと。もしも本当に賊が近くにいたら、助けを呼ぼうと大声をあげれば本末転倒。

 焦りつつも、静かに壁を壊せないか試したり床を調べる。床に這いつくばっていると、すぐ近くでガコンッと物音がした。

 同時に、床に突いている手首を何かにガシッとつかまれ思わず驚きと恐怖に悲鳴をあげそうになる。

「お待たせ、迎えに来たよ。さぁ、僕と一緒に未来を変えよう。自由になるんだ、白鴇」

 白鴇の手首をつかんだ何かと目が合った。頭にクモの巣やほこりをつけ、顔は土と血で汚れている。ニコッと微笑む彼は、約束のために信じ待ち続けていた兄。

 床下から手を伸ばしている彼は器用に周りの床板も壊すと、白鴇に「おいで」と手を引っ張る。

 やっと、やっとこの時が来た。あの日の約束通り、黒鷹は白鴇を助けに来てくれた。家族も、使用人達も全員を敵に回して、屋敷に火を放って。

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