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出遭う
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しおりを挟むずっと会っていなくても、白鴇がどんな性格なのかは黒鷹はよく知っている。だからこそ震えた。
努力が、白鴇が認められなかった。自分のせいで弟の全てが否定される。弟を傷つけたのは、苦しめているのは自分なのだと。
「僕のせいでごめんね、白。でも大丈夫。もうじき長になる僕のそばにいれば誰も白を傷つけない。僕達は双子なんだ、これからは一緒にいよう」
もう黒鷹は家族の中で1番の存在になりつつある。言葉を巧みに操って大人を誘導すれば白を守れる、そう思った。
白鴇の淡い黒の頭を撫でながらにっこり微笑むと、白鴇は見開いた目を――閉じた。うつむいて首を横に振る。
「だめだよ。兄さんみたいな良い子のそばに、僕みたいな悪い子はいちゃいけない。せっかくの良い子が悪い子になっちゃうから、だから…………ずっと会わないようにって……」
大名の屋敷ほど大きくはない屋敷の中で何か月も会わなかったのは偶然じゃなかった。大人達がわざと、会わせないようにしていた。
おかしいと思ったこともあった。会いたくて、同じ屋敷の中にいる弟宛てに文を出したこともあった。
返事はただの1度もない。文のことを聞けば白鴇は「知らない」と声を震わせる。おそらく、気付いた大人達が文を奪って処分したのだろう。
そこまでして優秀な兄と拙劣な弟を引き離したかったのか。大人とは、時に目的のために手段を択ばない。残酷なことする生き物だ。
「もう戻らないと。ここで兄さんと会ったのが、話をしたのが知られたら僕…………2度としゃべれなくなる」
「白、お前……」
「嬉しかった。久しぶりに兄さんに会えて、話をして。みっともない姿を見せちゃったけど、心配してくれた兄さんはやっぱり優しいね。僕の憧れなんだ」
立ち上がり1歩下がった白鴇は微笑む。目の前にいるのにまるで、遠い遠いところにいる黒鷹を見ているようだ。
どんなに頑張って勉強しても、どんなに頑張って鍛錬しても黒鷹の背中には届かない。彼に実際会って、白鴇はそれを感じ諦めてしまった。
1歩、また1歩と下がるたびに白鴇の力ない笑顔が暗がりへと隠れていく。
暗がりの中に姿が完全に隠れてしまう寸前、黒鷹は大きく踏み出して白鴇の腕をグイッ!と引き寄せた。
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