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出遭う
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しおりを挟む黒鷹は広間で待っていた。雪と鳶と猫丸がいない。鳶が限界なので雪を付き添いに休みに行っている。猫丸は和鷹の遺体を見守るために彼の部屋にいる。
黒鷹の右側に桜鬼が、その横に高遠が座っている。あと、なぜか1人増えていた。
「飛び込んできた情報にびっくりして飛んできたのよ。やっとクロポンの秘密も明かしてくれるっていうんだもの。それに、カズリンにお別れも言いたいしね」
「相変わらずにしても耳が早すぎるよ、千歳。君が白との間者じゃないかって疑ってしまう」
「白様はちぃのお得意様の1人だけど、前に怒らせちゃって。本気で殺されかけた恐い恐い思い出があるから、最近はほとんど近寄らないわよ」
黒鷹の向かいに腰を下ろした土方に「てめぇもこいつの仲間か」と睨まれているのは、情報屋の千歳。
ここ最近、屋敷の中を彼女の使役狐モドキがうろついていたのに小紅は気づいていた。新しい情報を求めて偵察に出していたのだろう。
文字通り、和鷹の死を知った狐モドキが慌てて主人のところに飛び込んだというわけだ。
小紅達が来るまでに桜鬼から話を聞いているらしく、土方に「ちぃは誰の仲間でもないの」と言ってデコピンを食らわすと口を閉ざす。
敵も味方も関係ない。今は、喪に服す。死を悼み悲しむ。
それと、千歳は待っている。彼女が長年あらゆる手段を使って得ようとした情報、黒鷹の秘密が明かされるのを。
千歳だけにではなく他の者達にも公開されるのだから情報屋の情報としては価値がなくなってしまうが。情報屋としてではなく千歳個人として、純粋に知りたい。
真剣だからこそ、いつもなら必ず腕に抱いている猫丸の猫を抱いておらず、狐モドキも外で待機させている。
「殺意がにじみ出ておるぞ、高遠。なんならわしとトシの両手を縛ってもよいが?」
近藤が土方の隣に座るとすかさず高遠が睨みつける。なにせ最大の敵だ。一旦の休戦といえど、夜鷹の敵といっても過言ではないほどの敵を前にしては桜鬼も、足に爪を立てて襲いかかりたい衝動を堪えている。
「高遠、桜鬼。この2人はお前達以上の殺意と衝動を胸にしまっているのがわからないかい?我慢できないのなら出て行きなさい、帰ってこなくていいから」
己の感情も抑えきれずに襲うのはただの賊と同じ。鷹の翼に野蛮な賊はいらない、という意を込めて放たれた静かな頭領の言葉は、高遠と桜鬼を黙らせた。
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