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出遭う
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しおりを挟む今、黒鷹は何て言った?
三上城の城主、三上白鴇が今回の一連を企てた黒幕だと?しかも、その白鴇は黒鷹の弟だと?双子だと言っていたが、もし本気なら血のつながった本物の弟だということなのか。
三上城は城と呼ぶには少々小さな城で、城主の三上家も大きな家系ではない。一時期、男が生まれないとかで娘を城主にするか婿を取るかで騒動になっていたらしいが。
「その話、詳しく聞かせろ。山崎は隊士達と先に屯所に戻っていなさい。トシはわしと、黒鷹の話を聞くんだ」
土方達の後ろから1人、姿を現した。新選組の局長、近藤勇だ。
「まったく、やけに帰りが遅いと思ってまたくだらぬ騒動を起こしているのではないかと来てみたら。その男の行動を把握しきれなかったこちらにも落ち度はある。見逃すゆえ、おぬしと白鴇殿の話をしてくれぬか?」
「み、見逃すって!いや、だがこれではっ――チッ…………わかった、局長の判断なら仕方ねぇ」
近藤には一瞬で現状を把握できている。黒鷹達のことをよく知っているからこそ、ここで何があったのか知らなくても和鷹が自分から男を殺したのではないと悟った。
そして先ほどの黒鷹の言葉を聞いてしまったから、これは新選組と鷹の翼だけで片づけられるような簡単なものではないと考えた。
山崎も突然のことに土方同様に納得がいかないという顔をしていたが。いつもどんな騒動が起こっても決して取り乱さず冷静に対処していた近藤が、酷く焦っていたので大人しく従う。
10人くらいいた隊士達を引き連れた山崎の姿が見えなくなると、近藤は男を抱き上げ和鷹を見つめる。
そこでまずはここで起こったことを、今度は桜鬼が説明。鳶は精神的に疲労していて今にも寝そうなのだ。
すかさず土方が「でたらめだっ!」とか喚いていたが、すぐに近藤の大きなゲンコツによって沈静した。こういうところは高遠によく似ているな。
「すっごく嫌だけど、今回だけは特別。こんなところで長話もなんだし、客として招いてあげる。お互い、刀は紅ちゃんに預けて。お前達も獲物を外しなさい。行くよ」
そう言うと黒鷹は刀を小紅に預け、和鷹を抱き上げると屋敷の方へと歩いていく。
敵である新選組を屋敷に招き入れるというのか。これには高遠が何か叫びかけたが。口を開けた瞬間に桜鬼が彼の刀を没収、ゲンコツを叩き落とした。
鉤爪を外した手で高遠の首根っこをつかんで容赦なく引きずっていく。さすが、高遠の扱いに長けている。
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