鷹の翼

那月

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おとうととおとうと

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 懐からクナイを取り出そうとした山崎を手で制し、土方は溜め息を吐いた。

「この状況では俺達がこうするしかないのはてめぇもわかっているだろうが。それでも手を引けというのか。何を考えていやがる?」

 幕府の狗と言われながらも正義を貫く新選組。義賊行為と度の過ぎたいたずらを何度も繰り返す鷹の翼。

 和鷹も命を落としたとはいえ、正義である新選組の一員が悪である鷹の翼に殺されたとなれば何もしないで戻るのはお上はおろか、町人達の信頼をも失ってしまう。

 けれど新選組の副長という立場上、この場に全員そろってしまっている鷹の翼を見逃すわけにはいかない。

 土方自身、今回のことに不信感を抱いている。どう考えても、新選組と鷹の翼を争わそうとしていると。

 そしてそれが、新選組でも鷹の翼でもない第三の者の働きなのかもしれないと、警戒している。それは黒鷹も同じ。

 ここで刀を抜いてしまえば謎の第三者の思うつぼ。しかし、素直に縛に着けばもう二度と自由はない。和鷹の敵も討てない。

「…………おいまさか、こんなことを企む野郎に心当たりがあるのか!?」

 もはや悲鳴にも近い土方の叫びに、黒鷹は何も言わない。押し黙ったままの顔をうつむかせ、和鷹の胸にあるクナイを握る手にグッと力がこもる。

 スッと血まみれの手を上げて「お前達、下がって」と高遠達に武装解除させた黒鷹は、少しの沈黙ののちゆっくりと顔を上げた。

 ずっと握っていた、和鷹の胸に刺さっているクナイを抜いて、一気に血が吹き出すのを気にも留めず土方をまっすぐ見つめる。

 和鷹の血で顔の半分を赤く染める、どす黒い殺意を身にまといながらも和鷹の遺体を胸に抱いたまま立ち上がる黒鷹の姿に、彼が口にした名前に、土方は息をのんだ。

「三上城の城主、三上白鴇。僕の………………双子のおとうと」


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