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おとうととおとうと
4P
しおりを挟む和鷹の右手からクナイが滑り落ち、カランッと金属音がよく響く。鳶も、他の5人の忍も、止まって見ている。
「和鷹さんッ!!」
「任務終了、散」
胸からあふれ出る血で足元に作った血だまりの中へ和鷹が倒れ込んだのと、今までにないほどの叫び声をあげて鳶が地を蹴ったのと、5人の謎の忍が瞬時に姿の消したのは同時。
一瞬という短い時間で和鷹の体を抱き留めようと伸ばされた鳶の手は、届かなかった。
残酷にも、曲者の返り血と己の血にまみれた和鷹の体は重力に逆らうことなく血だまりの中へ。
必死に手を伸ばし勢い余って体勢を崩した鳶が膝を突き、血だまりで跳ねた血が彼の顔を真っ赤に染め上げた。
横たわる和鷹は未だ、何が起こったのかわかっていないようだ。いや、わかろうとしない、理解しないようにしている。
だが肺を損傷している。こみあげてきた大量の血を吐き、自分の胸に刺さる小太刀を凝視。現実を受け入れ、わなわなと体が震え始めた。
「なん、で……お、れが、殺した?…………死ぬ、のか?」
全ては仕組まれたことなのか。曲者が和鷹に致命傷を負わせたのも、和鷹の手によって曲者の命を奪わせたのも。だとしたらなぜ?
鳶の足止めをしていたような忍ももういないし、曲者だって死んだ。どんなに考えようとしても、目の前で命の炎が消えようとしている和鷹を見つめることしかできない鳶は何も考えられない。
助からない。和鷹はもうすぐ死ぬ。忍として医療にも精通している鳶にはわかる、わかるからこそ体が動かない、声が出ない。持ち上げた手が宙をさまよう。
ドッドッドッドッドッドッと心臓が内側から叩く。痛みを感じるほどに強い鼓動に、息苦しさに彼は、ずっと無意識に息を止めているのだと気づいた。
「鳶、和!何があった、状況をせつめ、い…………和?お前……和ッ!!」
複数の慌ただしい足音が近づいてきて、先頭を走ってきた彼の声にビクンッ!と鳶の肩が跳ねた。ユルユルと顔を向ける。人間らしい、目の前の死に怯える青い瞳。
「頭、領……曲者が……忍が……わからない。俺……何も、できず……」
「あとだッ!そんなことよりも今は和鷹をッ……くそっ、血が、止まらない!お前らの手拭いを寄こせ、早くッ!!待ってろ、すぐに医者を呼んでやるから、だからっ」
血だまりの中に横たわる弟の姿を青い瞳に映した黒鷹は青ざめ、駆け寄ると無我夢中で小太刀が刺さったままの傷口を両手で押さえる。
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