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おとうととおとうと
3P
しおりを挟む右肩と左足に手裏剣が刺さるのも気にせず、まずは女を蹴り飛ばした。次に鎖鎌を持っている男の懐に一瞬で踏み込み短刀で斬りつける。
代わりに、もう1人の両刃のまっすぐな刀を持った男に背中を斬りつけられた。
こいつら、手練れの忍だ。忍装束を着ているが曲者のとはまた少し違う。曲者を助けようとしている仲間のように見えるが、違うのか?
手裏剣を投げているのが2人、襲いかかってくるのが3人。さらに背後に和鷹と曲者を庇っている。
そして、こんな時でさえ猛威を振るうのが睡魔。さっき和鷹が撃退したはずなのに、鳶のまぶたを引き下げようとする。
「チッ!こんな時に限って猫がいない。あいつらを呼んでくる、少しだけ時間稼ぎをしてくれ!まずは足手まといのお前、を……っ!!?」
鳶がいる場所とは反対側、屋敷の表側の偵察に出ている猫丸はこちら側にも見張りの猫を放していたはず。なのに、いない。
猫丸が猫を使役していることは新選組も知っているし、あらかじめどこかへ誘導されたか、もしくは猫丸自身に何かがあったか。
胸の奥がザワザワする。嫌な予感がする。全て誰かの手の平の上で踊らされているような、とても嫌な感じがする。
鳶ならできる。この場は彼に任せて、彼の足かせになってしまっている自分が応援を呼びに行こうと曲者の方を向く和鷹。
黒鷹ならそろそろ異変に気付いているだろう。まずは曲者を気絶でもさせてと、拳を振り上げようとした時だった。
ザシュッ!ドスッ!と、鈍い音が2つ同時に響いて鮮血が舞った。
「え……?あ、あぁっ……何で……」
和鷹は右手に持ったクナイで曲者を左胸から顎にかけて斬りつけた。曲者は、右手に握った小太刀を深々と和鷹の胸に突き刺している。
お互いがお互いを――違う、和鷹が斬りつけさせられたんだ。
口の端から血を垂らしニヤリと笑う曲者は、いつの間にか拘束具から抜けていた。自分のクナイを和鷹に持たせ、彼の右手を握り込んで自分を斬らせた。
頸動脈が切れている。何か言おうとしたのか、不気味に笑ったままわずかに口を動かしながらこと切れた曲者はバタリ崩れ落ちた。
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