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おとうととおとうと
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しおりを挟むどこの者なのか、何が目的なのか、鳶はしばらくは動きがあるまで泳がすように頭領に指示されていたのだが。和鷹の乱入により予定変更。
曲者にいち早く気づいた猫から話を聞いていた猫丸から話を聞き、その日から和鷹は猫丸と鳶の偵察にさりげなく参加していた。
もちろん天才忍者の鳶は彼の気配ですぐに気づいたが、あえて頭領には報告しなかった。
決意の目。和鷹は自分が鳶ほど上手く気配を消しきれないことをよくわかっていたから、気付かれないくらい離れた所から曲者を睨みつけていた。
和鷹には和鷹の目的があってのこと。こういった任務に慣れていない者には大変危険で、下手をすれば鳶さえも巻き込まれて何が起こるかもわからない。
守りきれる自信はない。けれど鳶は、和鷹の瞳に宿る光のために黙っていた、気付いていないフリをし続けた。
「新選組の監察方、山崎の部下だ。幕府の狗どもが、ついに本気になったってことか」
記憶力が高い和鷹はこの曲者を覚えていた。1度見ただけだが、新選組の監察方所属の忍。さすがに名前までは知らない。
時と場所を選ばない睡魔を飼っている鳶がボーっとしているので強めにド突いた和鷹は、舌打ちをして曲者の頭をつかむ。
「ちょうど牢が空いたんだ、ぶち込んで吐かせるぞ。ん、おい、どうした鳶?」
「…………まだ、いる。1、2、3……5人、ハッ!隠れて――危ないっ!!」
一気に目が覚めた鳶は咳き込みつつも周りに意識を集中させ、警戒態勢。曲者と和鷹を背に庇いながら短刀を抜いた。
瞬間、シュシュンッ!と飛んできた何かを鳶が短刀で弾き飛ばした。見えてはいない、空を切る小さな音に本能的に反応しただけ。
1つや2つではない。立て続けにいくつも飛んでくるそれは、忍が使う手裏剣。普通の手裏剣に比べて音が極端に小さく、真っ黒なのでほとんど見えない。
暗闇の中、それも3方から複数同時に飛んでくる手裏剣を全部見切って弾き飛ばしてしまう鳶は、やはり天才忍者。生まれ持った才能。
とはいえ、鳶だってただの人間。急に手裏剣の勢いが落ち飛んでくる方角も2か所になったかと思いきや、男が2人と女が1人襲いかかってきた。防ぎきれない。
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