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おとうととおとうと
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しおりを挟む鷹の翼の屋敷近くに不審な気配が1つ。屋敷全体が見渡せる、そして黒鷹の部屋がよく見える高い木の上。
鳶は己の体が発する音を全て消して少しずつ近づいていた。まだ、その姿が見えない。
曲者には違いない。どこかの忍が雇われて偵察に来たのか、頭領の首を狙ってきたのか。もしやまた山崎が?
1歩ずつ、慎重にその距離を縮めていく。もう少し、あと少しで枝葉に隠された姿が見える。大丈夫だ、相手はまだ鳶に気づいていない。
「っ!!」
鳶が次の1歩を踏み出すより早く、曲者が動いた。気づかれた!?いや違う、鳶は見た。曲者の姿を。
鳶がいる方角の、離れた場所にいるある人物の隠しきれていない気配に気づき立ち去ろうと踏み込んだ男の曲者。
次の瞬間、鳶の頭上をヒュンッ!と1本の矢が飛び、見事曲者の右足に深く刺さった。逃げようとしていた曲者は体勢を崩し木から落下。
すかさず、地面に体を打ち付けてもすぐに立ち上がり逃げようとした曲者に体当たりを食らわせる鳶。
「その者、ここ数日中に何度か兄上の様子を偵察しに来ていただろう。どこぞの賊に雇われた暗殺者かもしれないな」
右足に深手を負い上手く逃げられなかった曲者は鳶に捕まり、即座に両腕と両足を縛り上げられ口に手拭いを突っ込まれた。
着ているものが鳶と同じような、闇に溶け込む黒の忍装束。鳶を睨みつけていた闇を映す瞳は、弓を手にやってきた先ほどの矢の射手に向けられる。
「他に仲間がいる、かもしれない。俺の仕事。部屋、戻って…………休んで……和鷹さん」
「ならなぜ今まで俺にそう言わなかった?手前数日、お前の後を追ってこの男の偵察をしていた俺に気付いていたんだろう?それに俺は昨日から屋敷を離れ探っていた」
「…………はい。何か、深い考えがあってのことだと。しかし……ここからはかなり、危険ゆえ……」
弓も得意だったのか。姿を現した射手――和鷹は曲者の顔を確かめ「見たことがある」と苦虫を噛み潰したような表情で呟いた。
この曲者が姿を現すようになったのがちょうど、小紅が牢に入れられた頃。昼夜問わず、目がいいのかかなり遠くから偵察に来ていた。
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