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最強を求めて
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しおりを挟む「『強くなりたいなら俺の仲間になれ』ってさ、ぐっすり熟睡してる俺様を揺さぶり起こしてそう言ったんだぜ?ありえねぇよなぁ。でもさ、無理矢理起こされて意識もはっきりしてなかったはずなのに、覚えてんだよ。あの時の夜鷹様の眼を」
深い緑色の瞳は子供のように爛々と輝いていた。同性ながらに高遠は綺麗だと、目を奪われたんだそうだ。
普段の高遠なら返事をする前に、無理矢理起こされたことに怒って怒鳴り散らすところだ。しかしその時だけは冷静だった。
「あぁ、この手を取らねぇと俺様は死んじまうなって思ったんだ。だから言ってやったんだよ。『仲間になってやんよ。鷹の翼の一員になれば喧嘩し放題なんだろ?』ってな」
そう言って高遠は、小紅にニカッと笑ってみせた。心から嬉しそうな顔。
あの時、差し伸べられた夜鷹の手を取って良かったと安堵する高遠は急に、顔をゆがめて息を詰まらせた。
クルッと背を向け、目を擦っている。もしかして泣いているのか?昔話をして思い出した夜鷹の死を悼んでいるのだろう。
鼻をすする音、深呼吸を繰り返す音、ゆっくり上下する肩。小紅は、高遠を待った。
高遠の話を聞く限りでは、どうやらこの性格のせいで元々の家族とは決別して暮らしていたらしい。
宿屋に泊まる金もないほど困窮していたようだし、喧嘩をしてはどこか雨風をしのげる場所で寝ていた。野良、という言葉がしっくりくるか。
親と喧嘩して家出したきりだと言っていたし、当時の夜鷹はしつけのなっていない野良犬を拾った気分だったのかもしれない。言いすぎか?
「おい、てめぇ今すっげぇ失礼なこと考えてねぇか?」
「い、いえ、なにもっ。そんなに強さにこだわるのでしたら今度、私と手合わせしませんか?」
目元が赤くなっている高遠が振り返り、小紅の言葉に笑った。手首にしっかりついている鎖を指さして「ここから出られるのかよ?」と嘲笑う。
牢に入れられて数日が経つが、黒鷹が会いに来てもここから出られるという話がなければそんな雰囲気もない。
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