鷹の翼

那月

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最強を求めて

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 どう考えても、高遠が近藤を1人で倒せるほど強くなれるとは思えない。仮に今の何倍もの力をつけたとしても“近藤勇”を倒すことはできない。

 それはきっと高遠自身もわかっている。わかったうえで、叶わぬ夢だとしても、強さを求める。

「呆れるほどまっすぐな人ですね、高遠さんは。その様子だと、先代の頭領の夜鷹様にも勝負を挑んだのではないですか?あの方はゆいいつ、近藤局長と同等の力を持ったお方でしたから」

 高遠が強さを求めるのが黒鷹を守るためなのならば、鷹の翼に入る前はどうだったのだろう?

 もしかしたら、それ以前からこんなだったのかもしれないと思った小紅はかまをかけてみた。

 鷹の翼と新選組がぶつかり合って戦闘になった際、近藤と火花を散らしていたのはいつも夜鷹だった。まぁ、争うきっかけとなった2人なのだから当然か。

 和鷹でも黒鷹でも近藤には歯が立たない、かすり傷ひとつつけることはできない。が、夜鷹ならできる。

 それくらい強かった。力も速さも技も、近藤と同等ゆえに負けることはなかった。しかし、勝つこともなかった。いつも引き分け。

 周りを巻き込むほど激しい戦闘になった時は2人とも、お互いしか見えなくなるので他の者は命を守るために避難。どちらかの体力が尽きるまで終わらない。

「ありゃあ恒例行事みてぇだったけどよ、いつも本気では戦わねぇんだよな」

 刃を交えるたび、2人はお互いの強さを確かめるように手加減をして戦う。ギリギリ殺さないように、首や左胸はわざと避けて戦っていた。

「鷹の翼は決して殺しをしませんし、新選組もお上からの命がなければ宿敵でも殺せません。純粋に、楽しんでいたのでしょう」

「ふざけてやがる。俺様も……」

「高遠さんも、夜鷹様に救われたのですか?町で大暴れして新選組に捕まりそうになったところを助けてもらったとか」

 高遠の癖に空気が重くしんみりしてきたので、彼が話を進めやすいように冗談を言ってみた小紅。

「ちっげーよ!強くなりたかったのは昔からで、道場破りばっかりやってたんだけどよ。飽きた。そんで、当時最強だって言われてた近藤と夜鷹様に挑んだんだ――」

 小さな子供の頃からかなりの荒くれ者だったらしい。枝を振り回して喧嘩三昧だった小童は木刀を振り回して強者を狩りと町で喧嘩三昧。

 大きくなって刀を帯刀するようになるとさらなる力を求めて道場破りと、やっぱり町で喧嘩三昧。

 お世辞にも高遠は、周りの者達に比べるとそんなに特別強いというわけではない。周りの者の方が異常に強いだけだが。

 ゆえに、町でも何度も負けた経験はある。いや、むしろ負けた数の方が多いのかもしれない。

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