鷹の翼

那月

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最強を求めて

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 ――それから数日後。牢での暮らしにも慣れてきた小紅の元に、とっても不機嫌な高遠がやってきた。

「飯だ、食えっ!食わねぇっつうんなら俺様が食うぞっ!クッソがっ!」

「いえいただきます。ありがとうございます。いつにも増してお元気そうですが、何かあったのですか?それにその傷……」

「あ゛ぁ?何でもねぇよ!ったく、何でよりによってこんな時に俺様がこいつの見張りなんか……クソッ!」

 触らぬ神に祟りなし。そう悟った小紅はそれ以上声をかけることなく、乱暴に投げ込まれたおにぎりを大人しく口に運んだ。笹の葉に包まれているとはいえ、見事に変形している。

 小紅の方を向くでも背を向けるでもない高遠は相当嫌なことがあったのか、ずっとイライライライラ。腕を組んで貧乏ゆすりをして。一体何があった?

 鉄格子が揺れるほど非情に激しい貧乏ゆすりをしている彼の着物は所々が破けたり切れたりしていて、腕や足には包帯が巻かれている。それに右目にはクッキリ痣が見える。

 これは派手に喧嘩でもしてボロ負けをしたか。そんなのはいつものことだろうが、それにしても虫の居所が悪い。

「…………っ、だぁぁぁぁぁーーっ!!なんっで何も聞かねぇんだよ!?もう少し粘って声をかけてみろやっ!」

「え、えぇっ!?ゴホッ!ゴホッゴホッ、コホッ……うぅ、コホッコホッ」

「おぉ悪い。これ飲んで……じゃなくてだなぁ!あーもういいっ!屋敷の修復は終わったし、猫丸は猫の世話ばっかだし、桜鬼は寝込んでやがる頭領につきっきりだし、弟は部屋に引きこもってやがるし、雪と鳶は朝から町へ出てやがる。暇で暇で死にそうだから町へ行きゃあ鬱陶しい野郎に絡まれてタコ殴りにしてやった。けどそいつ、名の知れた悪であとで仲間率いてきやがった。俺様1人に30人近くでかかってきやがってだなぁ……っ!!」

 沈黙の時間は1分ともたなかった。突然、大爆発した高遠に驚きのあまり頬張っていたおにぎりを詰まらせかけた小紅は涙ながらに大噴火中の彼の話に耳を傾ける。

 声をかけない方がいいと判断して静かに黙々と、姿勢よくおにぎりを食べる小紅の様子が気に入らなかったのか。チラッチラッと横目で様子を見てからの、大爆発。

 派手な喧嘩をしたのは当たっていたか。悪い方に名の知れた組の1人をタコ殴りにしてしまった高遠にも非はあるが、報復で多勢に無勢とは。

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