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浅葱色の想い
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しおりを挟む当然、そんな抵抗をされるとは思ってもみなかった黒鷹はギョッと驚き、つい刀を引いてしまったのでさらに小紅の手の平が深く切れた。
「あっ……何してんだよ、もう。痛いでしょ、手を離してよ。見てるこっちが痛い」
「なら見ないでください。驚かされましたが、鳶さんのおかげで現実と向き合う決心がつきました。だからどうか、黒鷹様も逃げないでください」
「…………はぁ。本当に、厄介なものを遺してくれたよ、夜鷹さんは。紅ちゃんがここに来てからめちゃくちゃだ――」
「私がここに来た理由は2つ。表向きは、土方さんの命で近藤局長と夜鷹様が争うようになった理由を探るため。そしてもう1つが、近藤局長が夜鷹様と交わした約束のため。争いの理由はついにわかりませんでしたが、後者の約束を私は知りたいんです。本当の父親、夜鷹様が私を近藤局長の養子にさせてまでして交わした約束を」
「そ、そんなの、君の勝手な――」
「それから、新選組は鷹の翼を本気で潰そうとは思っていません。黒い金で私腹を肥やしているやからを見て見ぬふりしかできなかったのですから、正直言ってあなた方が活躍してくださると助かります。イタズラは、困りものですが」
今の小紅が話せることは全て話した。小紅が知っている情報のすべて、これ以上は彼女自身も知らない。
小紅は覚悟を決めた。新選組を敵に回してでも鷹の翼の一員、黒鷹の小姓の小紅として生きることを。ずっと隠されてきた自分の秘密を知ることを。
鳶と話をしたおかげで、小紅は1度は捨てた命を拾うことができた。生まれ変わった気分だ。今までと見える景色が全然違う。
もう何も隠さなくてもいい。任務失敗の絶望は、心の解放のカギとなった。
最初は情報屋の千歳も知らなかった“今の小紅の父親は近藤勇である”という、小紅が最期まで隠し通したかった事実も打ち明けることができた。
あぁこれで、千歳が小紅を強請ってまでして手に入れた事実も価値がなくなってしまったな。しょぼくれる千歳の姿が目に浮かぶ。
自分の実の娘を敵対する近藤の養子にするなんて、近藤と夜鷹の関係性は謎に包まれている。
紅花が新選組内で“存在しない存在”だったのはきっと、敵である夜鷹の娘が近藤の養子だからなのかもしれない。
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