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浅葱色の想い
6P
しおりを挟む「俺は、雪を愛している。心から。何を犠牲にしてでも守りたい。組織としては頭領を第一に守らねばならないが、俺の1番は雪。だから、俺は雪のために…………生きている?すまない。どんな言葉を使えばいいのか、わからない」
最初の発言はともかく、鳶にしては有り得ないほどのしゃべりだ。明日は大粒のひょうが降ってくるんじゃないか?
伝えたい想いがあるのに、普段からほとんどしゃべらないので上手く言葉を見つけられず伝えられない。
もどかしそうにわずかに眉根を寄せ、口元を覆っている布をさらに引っ張り上げる。もっと適切な言葉があるはずだと、必死に探している。
「俺は……俺が、望んでいるのは、雪の幸せのために生きること。小紅さんは、今…………何を望む?」
それはあまりにも不器用で、あまりにも奇妙な問いかけだった。
変すぎて、つい小紅は笑ってしまった。ジャラッと音を立てて鎖がついた手で口元を覆い、クスクスと小さく笑う。
「雪さんは幸せ者ですね。鳶さんがこんなにも情熱的な愛妻家だとは思いませんでした、いい意味で。ちょっと、雪さんが羨ましいですね」
「っ…………と、問いに答えて、くれ……」
「私の望みなんて何もありませんよ。大事な任務を失敗しておいて死ぬこともできずに敵に生かされ、その上私に何を望めと?」
言葉足らずなのと、思っていた以上に雪への愛を暴露してしまった自分に赤面してしまう鳶。
それと、思っていた以上に鳶が真剣に返事を待っているので笑い顔を真顔に変えて、自嘲気味にすんなり出てきた言葉を吐いた。
が、そんな小紅の返事は鳶のお気に召さなかったようだ。何も言わずさらにググッと眉間にシワを寄せ、顎に手を当てて何かを考え込んでいる。
小紅は待つことにした。彼が何を考えているのかはわからないが、彼が思う何かを必死に伝えようとしている。それが伝わってきたから。
愛する雪を遠ざけてまでして話したかったこと。伝えたい想い。
「あぁ、これだ。今の、返事……新選組の副長、土方歳三の小姓、紅花としての言葉。俺が、聞きたかったのは…………鷹の翼の頭領、黒鷹さんの小姓、小紅としての言葉。ん…………確かに、新選組の間者としては任務を失敗、紅花は死んだ者。だが……小紅さんは…………まだ、生きている」
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