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真実の嘘
16P
しおりを挟むこの期に及んで何もしないだろうと小紅を信じているわけでもないだろうが、バカなのか?屋敷中にいる猫達がさりげなく目を光らせているとはいえ、せめて誰か呼べよ。
ほら、廊下に這いつくばっていた小紅が起き上がって、溜め息を吐いて歩き始めたぞ。どこへ行くんだ?
ゆっくり歩いてキョロキョロ。お前も、和鷹の真実は伝え終わってもう何もないのに逃げないんだな。鷹の翼に情が湧いてしまったのか?
屋敷の中を歩き回り、高遠の怒号と桜鬼と雪と猫丸の声が聞こえた――たぶん鳶もそこにいる――広間は何となく避けた。
途中、屋敷のあちこちに猫がいた。昼寝をしていたのも毛づくろいをしていたのも、何か小さなもので遊んでいたのも。
小紅にすり寄ってきた猫もいた。かまってあげたかったが「ごめんね」と少し撫でてから離れ、また歩く。
どうやら黒鷹を探しているようだ。彼の部屋の前で立ち止まり、中の気配を探ってから障子を開けていないことを確かめると中には入らずに顎に手を当てて考え込む。
屋敷中を探してもいないということは、もしかして厠?もしそうならすぐに戻ってくるはずだが、四半刻ほど、部屋の前で正座をして待っていも戻ってこない。
やがて小紅は立ち上がりある場所へと向かった。屋敷を探してもいないということはきっと、彼はあそこにいる。
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