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真実の嘘
15P
しおりを挟む母親が違う兄弟が何人もいる。生きているかはわからないが、新選組の調べによれば奥方との子供はできず、奥方は東岡の女遊びと酷い酒浸りに愛想が尽きてどこか遠くへ夜逃げしたんだとか。
「……で、その、俺の父親、東岡は今は?」
「4年ほど前に亡くなっています。毎日、朝から晩まで借金をしてまで浴びるように飲み続けたお酒が原因で病気になり。それでもなおお酒をやめませんでしたから、誰にも看取られることなく……」
「そう、か………………不思議だ。新選組の狗のお前の言葉なんて信じたくもないのに、なぜか真実なんだと信じてしまう」
「真実ですから。酷い出生でも子供に罪はありませんから、密かに新選組の一部や関係者達が子供達の様子を見ていたのです」
性格はどうであれ、剣の腕は確かなもので幹部にも匹敵するほどだったとか。ただ、その黒歴史のせいで彼の存在は新選組の歴史からは完全に抹消されている。
和鷹は大きく息を吐いた。ゆっくり大きく息を吸って、ゆっくり息を吐く。
和鷹の性格は母親似だと断言できる。東岡の黒歴史を聞いている間、汚いゴミでも見るような表情になっていた。
「頭がいてぇ。めまいがするし吐き気もする。けど、俺は逃げないぜ。兄……黒鷹のことも東岡のことも、俺なりにじっくり向き合うつもりだ。って、なんでお前に言ってんだよ俺は」
肘掛にぐったりもたれかかった和鷹の様子に小紅は、力を抜いて「知ってよかったですね?」と微笑みかける。
「あぁ、何も知らないままモヤモヤするよりは楽になった気がする。だからってお前は許さないからな、絶対。縛り上げて拷問にかけて新選組の情報を吐かせてやる」
どこかで生きていて、多少の悪事に手を染めていても愛さえあれば一目だけでも見て見たいと思っていただろう。
しかしもうすがすがしいほどの、和鷹が「こいつは大嫌いだ」ときっぱり断言できるくらいの悪男だったので、会えないのは残念だがもう関わらないと即座に決意した。
が、小紅のことと黒鷹のことはまた別。敵意をむき出しにした和鷹は「出て行け」と、小紅の腕をつかむと部屋の外へと蹴り飛ばした。
小紅は除隊されたとはいえ新選組ですよ。黒鷹といい和鷹といい、1人になりたいからって敵を野放しにするんですか?
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