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真実の嘘
12P
しおりを挟む――黒鷹に手を引かれ、沈黙している和鷹の部屋へとやってきた小紅。
黒鷹は選んだ。和鷹の真実を、敵である小紅の口から、和鷹本人の前で聞くことを。きっと和鷹は深く傷つくだろう。
「お前、本当に新選組の間者だったんだな。チッ、狗め……」
小紅の真実はすでに和鷹の耳にも入っていた。ものすっごく不機嫌。声をかけられれば返事はするが、黒鷹の方を見ようとしない。
黒鷹が本当の兄ではない、と聞いたばかりだから。黒鷹と和鷹のことと向き合うこともまだできないのに、今度は両親の話だ。
「何とでも。黒鷹様にお話しした通り、私や新選組の幹部のごく一部は和鷹様のご両親を知っています。もう嘘は吐きません。あなたが知りたいとおっしゃれば、私は真実をお話ししましょう」
小紅は告げた。ピシッと背筋を伸ばし、和鷹の前でなら話すと黒鷹に話したこと。そして黒鷹がその条件を飲んだこと。
ここでようやく和鷹は黒鷹の方を向いた。キッと睨みつけた。自分が知りたいから、人の気も知らないでと言いたそうな怒りの視線を、黒鷹は受け止める。泣きそうな顔で。
「和が聞きたくないなら僕も聞かない。僕にとって和は本物の弟、大切な家族だか――」
「だまれっ!!お前は俺を利用したんだ。自分のことは一切しゃべらない、弟が欲しかったからかわいそうな俺を都合よく弟に仕立てた、最低な男なんだよ!」
「じゃあ、僕のことは許さなくてもいい。怒っても憎んでも構わないから、亡くなる寸前までずっと探してくれていた夜鷹さんのために――」
「夜鷹様のため?ふざけんな。バカみたいにお人好しなあのお方が俺のために寝る間も惜しんで探してくれてたってのは俺だってよく知っている。そんな夜鷹様の口から出る話はいつも黒鷹、お前の話だ。最初に拾われたからずーっと金魚の糞みたいにくっついて、俺の記憶がないのを良いことに兄貴ぶってあれこれ偉そうに世話してさ。俺と夜鷹様との間にはいつもお前がいた。頭領を引き継いでからはますます偉そうになって。夜鷹様にでもなったつもりか?しょっちゅう風邪ひくくらい体が弱いくせに出しゃばって俺達を庇って、傷ついて伏せるなんて言語道断。お前が何を目指してんのかはわからねぇけどさ、わからなすぎてついていけねぇんだよ。それは俺だけじゃない、他の皆も同じことを想っている。悩んで、苦労して、傷ついてんのはお前だけじゃない。お前だけが、夜鷹様の“特別”だと思うなよ。黒鷹が騙してきたのは俺だけじゃない、他の仲間達皆だ」
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