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真実の嘘
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しおりを挟むそれは新選組に入ってからも続き、鷹の翼に侵入してからも心の弱い頼りない女の子を演じてきた。
ただ、それが苦しくなってきた頃だった、小紅の正体がバレてしまったのは。そうなるのも、時間の問題だったのかもしれない。
それくらい鷹の翼での暮らしは、小紅にとって色鮮やかで眩しいものだった。たった数日のことであっても、様々な過去を抱える彼らと過ごした時間は小紅に、心の存在を強く感じさせた。
今も、自らの胸に手を当てている小紅はその奥で痛みを感じている。ズキズキと。新選組と鷹の翼への罪悪感。
拘束する気なんてないのか、黒鷹は墓の前に着くと小紅の手を離してしまった。
小紅では逃げられないと甘く見ているのか、もしくは逃げないと信じているのか。少し咳をして、暗い顔をうつむかせる黒鷹からは何もわからない。
身軽なら小紅なら、1畳ほどしかないこの狭い場所でも壁を蹴って蹴ってあっという間に屋根の上に脱出することができる。しかし慎重にいきたい小紅は逃げることは考えず、黒鷹の様子をうかがうことにした。
「…………僕にとって和鷹は、本物の弟。記憶がなくても、血のつながりがなくても、和鷹は僕の最後の家族。守りたい大切な家族なんだ」
「でも、真実を知ってしまった和鷹さんはあなたのことをどう思っているのでしょうね?今でも兄だと、家族だと思っているでしょうか?」
「それは……」
振り向いた黒鷹の顔が曇った。小紅の足元を見つめる瞳は不安に揺らめいていて、それ以上の言葉を紡ぐことなく口を閉ざしてしまう。
その切ない表情に小紅は胸の痛みを覚えた。目の前にあるキセルが供えられた夜鷹の墓を見つめ、うつむいたまま何も言わない黒鷹を見つめる。
やがて目を閉じ、大きく息を吸い込んだ小紅は息を吐いて目を開けた。
「お話してもいいですよ、私が知っている和鷹様のご家族のこと。しかし、今ここでではありません。和鷹様本人の前でなら、お話いたします」
ピクリと肩を震わせ顔を上げた黒鷹の瞳がさらに揺らめいている。きっと、和鷹の心を案じているのだろう。
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