158 / 386
真実の嘘
4P
しおりを挟む「あの時、黒鷹様を置いて逃げてしまったからですか?」
「さて、どうだろうねぇ?」
屋敷の中にいるのが臥せっている黒鷹と、いまだに敵味方の判断がつかない小紅だけというわけはないはずだ。それにしても静か。不気味なほどに。
「高遠さんや和鷹さんは私のことを新選組の間者だと決めつけていますが。そもそも、鷹の翼の先代頭領の夜鷹様の娘である私を、新選組の方々が仲間に招き入れると思いますか?」
「さて、どうだろうねぇ?」
たしかに。改めて落ち着いて考えてみればそうだ。特に気難しい、和鷹のような性格の土方ならなおのこと、小紅を仲間になんて考えづらい。
「もしも私が間者ではないと確定したら、仲間だと認めてくださいますか?」
「さて、どうだろうねぇ?」
疑いが晴れても認められないのか。さっきから返事は「さて、どうだろうねぇ?」ばっかり。もう4回目だ。声の調子も全く同じ。
一体何を考えている?目を閉じて口元に笑みを浮かべたまま、同じセリフばかりの黒鷹をジッと見つめ、口を閉ざしてしまった小紅。
いい加減、無機質な適当な返事にも呆れてしまったのだろう。と思いきや、そうではないらしい。
静かな彼の様子に完全に眠ったと思ったのか「おやすみなさい」と呟いて顔を上げる。首だけ動かして、部屋の中を見渡す。
何も変わっていない、と思う。2日3日で部屋の物が変わるものでもないと思うが、昨日は夜中中屋敷を空けていた。
変化がないということは少なくとも、黒鷹の部屋には新選組など他者が出入りしていないということ。もしくは、気付かないように上手く痕跡を消されているか。
部屋の持ち主の黒鷹が何も言わない、落ち着いているのであれば大丈夫だろう。彼が隠していなければ、だが。
シンと静まり返る部屋、屋敷。聞こえるのは黒鷹の静かな寝息だけ。あとどれくらい寝るのだろうか?その間ずっと、小紅はここで静かに時間が過ぎるのを待つのだろうか?
「……あの時、猫丸君の手を振り払ってでも留まっていれば、こんなことにはならなかったのかな……」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる