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真実の嘘
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しおりを挟む翌日。目を覚ました小紅は青い顔で真っ先に黒鷹の部屋へ。
「もうしわけありません!小姓の身でありながら頭領よりも先に逃げ出してしまうなんて、その上お怪我を負わせてしまうなんて……っ」
「大丈夫だよ、こんなの大したケガじゃないし。コホッコホッ……僕としては、紅ちゃんが無事で何より、ってね」
「しかしっ…………辛いんです。私だけ何もできないのは、皆さんと違うのは、足手まといになるだけで一緒にいる意味がない」
「コホッ、んんっ……いる意味がないなんて、誰が決めたの?」
「だってそうじゃないですか!いくら私が新選組の間者かどうか見極めるためとはいえ、ろくに戦えない私をそばに置いては最悪、黒鷹様のお命が――」
「君は鷹の翼の一員、ひいては僕の小姓。そばにいるのは当たり前。たとえ能力が高かろうが低かろうが、君を連れて潜入するって決めたのは僕なんだから。全ては僕の責任。何が起ころうと、全ての責任は頭領である僕の責任だよ」
自分のふがいなさに、つい声が高くなる。膝の上に置かれた2つの握りこぶしはきつく握りしめられ、声を荒げる割には目を合わせようとしない。
そんな小紅を、布団の中から見上げる黒鷹。近藤に腹を殴られはしたがそこまで重症ではなかったはずだ。
朝から少し、調子が悪いのだ。やや高い熱と咳のせいでずっと、大人しく横になっている。そこへ小紅が飛び込んできたというわけだ。病人だぞ。
実は体調を崩しやすい黒鷹が倒れたのは、昨晩無理をさせてしまった自分のせいだと思い込んでいる小紅。とにかく謝りたかったのだろう。
責任を感じているのならもう少し静かにしてやれないものか。そんな小紅をまるで未知の生物でも見るような目で不思議そうに見つめる黒鷹は、時折咳をしつつも静かに言葉を紡ぐ。
「侵入がバレていたとは考えにくいけど。近藤の迅速な対応力には恐れ入ったよ。コホッコホッ……まぁでも、悪戯もできたし金も手に入れたから、いいんじゃない?」
子供っぽく笑いながら「多少の怪我は付き物だよ」と言う黒鷹に、小紅は違和感を覚えた。
まだ出会って数日。けれど黒鷹が普段と違って弱っている、疲れているように見えるのだ。体調を崩しているせいもあるだろうが、どこか声に力がない。
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