鷹の翼

那月

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逢瀬

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 新選組では局長の近藤だけ、鷹の翼では先代頭領の夜鷹しか知らない。夜鷹は黒鷹にも打ち明けていないし、知っているのは近藤だけ。

 しかし近藤は頑なに口を閉ざす。あともう1人、情報屋の千歳も知ってはいるが、その情報は非売品級。

 ゆえにこうしてハナを潜入させ、何か手掛かりはないかと探らせている。今のところ、まったく見当もついていないようだ。

 忍ではないが忍よりも忍らしいハナでも真実にたどり着くことはできないのか?

 知ろうと必死になれば不信感を買い、逆に探りを入れられる。そう簡単にボロが出るようなハナではないが、慎重に慎重を重ねねば。

 もしも万が一、ハナが新選組の間者だとバレてしまったら。その時ハナは一瞬も迷うこよなくその命を絶つだろう。

「お前は忍じゃないんだ、もしもの時は大人しく捕まっていろ。お前1人ぐらいすぐに助けに行ってやる。だから…………命を粗末にすんじゃねぇ」

 ハナの言葉に息をのんだ土方。簡単に口にする、一切の迷いのない口調、言葉。ハナならば本当に簡単に命を捨ててしまいそうで、ブルッと震えた。

 いつまでたってもよくわからない。机に向かい筆を手に取ると、そのまま書きかけだった手紙の続きを書き始めた。

 今度はハナの手が震えた。返事をすることなく障子を開け廊下に出ると後ろ手に閉め、空を仰いで、笑った。


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